第四話-8
クラコは顔を真っ赤にして文句を垂れてくる。
「じゃあノーってことか?」
「ま、待って。凌駕、暴走しすぎ」
「暴走なんてしてない。俺は至って冷静だぞ」
「ひゃうっ!?ちょ、ちょっと・・・!?」
クラコを窓際へ押しやり、本気であることを主張する。
「三重子。好きだ」
「んんっ!?」
そのまま唇を塞ぎ、舌も使ってクラコの口内を愛撫してやる。
「やめて!」
「っ!?」
そう叫んだのはクラコ・・・ではなく、廊下にいたユイだった。横にはヨッシーと、先ほどファミレスにいた烏丸さんとやらまでいる。
「ユイ・・・」
「クラコも、リョウも、ヨッシーも、みんな嫌い!みんな嘘つきで!みんな意地悪だ!」
「ユイ!」
クラコの叫びも虚しく、ユイは泣きながら走り去ってしまう。
それを追いかけようと足を踏み出すも、クラコに制されてしまう。
「私が行く。今度こそ、本当の本当にケジメをつけてくる」
かっこよくそんなことを言って走り出そうとしたクラコだったが、今度はそれをヨッシーが制した。
「リョウ、クラコ。こちら、烏丸さん」
「おいヨッシー。こんなときに部外者を紹介してる場合かよ!」
「部外者じゃないよ。彼女は、ユイの親戚なんだ」
ヨッシーのその言葉に俺は、いや、俺とクラコは目を丸くした。
「しん、せき・・・?ちょっとヨッシー!どういうこと!?ユイは天涯孤独で、身内はいないはずじゃなかったの!?」
「ごめんね。騙してて。ユイは、国からの援助で生活しているつもりだったと思うんだけど」
「え、違う、のか・・・?」
俺は烏丸さんに視線を移す。
この人が、ユイの親戚なら、ヨッシーが言おうとしていることは、まさか・・・。
「私が、彼女の生活を影ながら支援してきました」
ヨッシーの代わりに、烏丸さん自ら告白する。
「い、いつから・・・?」
「ずっとです。唯の両親が亡くなってから、ずっと」
「じゃあ、じゃあどうしてユイを引き取らなかったんです!?そういう話はあったはずですよね!?」
「そのことについては、僕が説明するよ。烏丸さん。後はお願いします」
「はい」
俺でもなく、クラコでもなく、ヨッシーですらなく、ユイの親戚である烏丸さんが、ユイが走り去ったほうへ駆け出した。
第四話 終