第四話-7
「ユイは大切な友達だって話」
「そうだっけ?」
たしかにユイは大切な友達だけど、今はその話をしていただろうか。
というか・・・。
「三重子、今すごく恥ずかしかっただろ」
「うるさいわね」
クラコは今みたいな恥ずかしいセリフは普段言わないからな。
「とにかく。ユイには、私たちしかいない。凌駕に振られて、傷ついてる」
「ああ・・・」
「だけど、ヨッシーには秘策があるみたいなの」
「ヨッシー?秘策って?」
「そこまでは知らないけど、『ユイが傷ついた時は僕に任せて』って言ってたわ」
あいつ、まさかユイに告白でもする気か?少し前に佐藤さんに告白して振られたばかりだと言うのに。
「じゃあ、ユイのことはヨッシーに任せて大丈夫ってことだな」
「そういうこと。元々、私も凌駕には、慰める資格なんてないけどね」
「まぁ、そうだな・・・」
諦めろと言った親友と、他に好きな人がいると断った友達。そんな俺たちが、ユイのことを慰められるわけがない。
「それでクラコ。どうして失踪みたいな真似したんだよ」
付き合わないほうがよかったと言った意味はわかったけど。
「凌駕と付き合わなければ、好きにならなければ、ユイと喧嘩することもなかったなって・・・」
やはりそんな理由か。
「じゃあ三重子。俺と別れたいのか?」
「そんなわけ、ないじゃない・・・。別れたいなんて思ってたら、わざわざいなくならないわよ」
「・・・」
俺とは別れたくない。けどそれだとユイが傷ついてしまう。どうすればいいのかわからず、一時的とはいえ連絡を絶った・・・そんなところか。
「三重子。結婚するぞ」
「は?結婚って、本気・・・?」
「冗談でこんなこと言うかよ」
「でも、ユイが・・・」
「別れる気はないんだろ?俺もない。なら中途半端に恋人を続けるより、結婚したほうがユイのためになるんじゃないか?」
なんて自分勝手な考えに過ぎないのだが。
でも俺とクラコが結婚しなかったら、ユイはいつまでも『いつか別れるんじゃないか』という期待を抱いたままな気がする。
「倉敷 三重子。俺と結婚してください」
「っ!?い、いきなりプロポーズしないでよ!」