第四話-3
だが、俺のその期待は裏切られた。
クラコの家から近い所のファミレスにはいなくて、ヨッシーの家から近い所のファミレスには・・・いた。ただし、クラコの姿はない。
「あれ?リョウ?」
いたのはヨッシーと、スーツを着た見知らぬ女性。
「ヨッシー、お前・・・」
クラコが大変な時に、なに呑気に女と会ってんだよ・・・!
「溝口くん。こちらは?」
「あ、はい。こちら、僕やユイの友達の、寿 凌駕」
「寿・・・あなたが。はじめまして。私は烏丸 静江(からすま・しずえ)と言います」
聞いてもいないのに女性、烏丸さんは名乗る。
「はじめまして。では失礼します」
「え?ちょっとリョウ?」
踵を返し、次はユイの家へ向かう。
ヨッシー・・・見損なったぞ。そんなに彼女が大事なのかよっ!俺たちよりもっ!
「はぁ、はぁ・・・」
休憩もせずに走り続けてきたため、ユイの家に着いた頃には息を切らしていた。いや、とっくに切らしてはいたんだけど。
「ユイ!いるか!?」
庭に回って窓から居間を覗き込むが、相変わらず人の姿はない。
玄関のほうへと戻り、呼び鈴を押してからドアノブを引いてみた。
「不用心だっての・・・」
前回訪れた時と全く同様に、施錠されていなかった。まさかいつも開けっ放しなのか?
いや、それも気にはなるが今はクラコだ。
「クラコ!いるか!?」
ヨッシーとは会っていなかった。あとはユイの家にいると願うしかないのだが、あることに気がついてしまった。
もしもユイがいつも玄関を施錠していなかったとして、ユイがクラコと会っているのだとすると、何も家で会っているとは限らないのでは。
「・・・」
そうなるとユイかクラコのどちらかと連絡が取れなければ、自力で捜すしかなくなるわけだが・・・ユイの部屋に入ったところで、その考えが間違っていたと知らされる。
「ユイ・・・!」
そう。ユイはいたのだ。ベッドを背にして背中を丸めてうずくまっている。
「リョウ・・・」
いつもの明るさが皆無のユイ。
クラコはユイを傷つけてしまうかもと言っていたが、そのことと関係あるのだろうか。