第四話-2
そういう事情があり、俺はクラコの家の前に来ていた。
本当はユイとヨッシーにも来て欲しかったのだが、ユイは連絡が取れないしヨッシーは『とても大事な用事があるから』と言って友達の危機を見捨てた。
「・・・」
呼び鈴を押す。
土曜日だ。仮にクラコ本人がいなくても、共働きの両親が休みで応答してくれる可能性がある。
「・・・なんで誰も出ないんだよっ!」
二度三度と呼び鈴を押してみたが、それでも応答がなかったので諦めてクラコの家を後にする。
とは言えクラコがどこにいるのかなんてわからない。
「考えろ考えろ考えろ・・・!」
クラコはケジメをつけると言っていた。俺とユイを傷つけてしまうとも。
『付き合わないほうがよかった』という一方的な電話。
連絡が取れないクラコとユイに、クラコのこと以上に大事な用があるらしいヨッシー。
「・・・はは」
考えて、しかし考えるまでもなかったことに気付く。
クラコには、俺たち以外の友達がいないはずなのだから。だとすると、行き先は残りふたつしかない。もしそこにもいなければ・・・その時はその時で考えるしかない。
携帯電話を取り出す。
ユイにかけてみたが、やはり電話には出ない。
次いでヨッシー。
『もしもしリョウ?ごめん。さっきも言ったけど』
「知ってる。用事があるんだろ」
『え、うん。だからさ、電話はしてほしくないんだけど』
「ヨッシー。お前今どこにいるんだ?」
電話の向こうからは、若い男の馬鹿そうな笑い声が聞こえてくる。ヨッシーに兄弟はいないはずだし、父親もあんな笑い方はしないだろう。
『どこって、ファミレスだけど』
「そうか。悪かった」
それだけ言って通話を終える。
馬鹿そうな笑い声は、恐らく付近の席にいる客のものだろう。ヨッシーがそんな馬鹿そうなやつとつるむとはかんがえられないし。
「クラコ、待ってろ!」
クラコは恐らく、ヨッシーと一緒にいる。
ヨッシーがクラコ、というより俺たちを優先しないわけがないのだ。
問題はどこのファミレスか、だ。聞いても教えてくれないと踏んで聞かなかったが、大体見当はついている。
クラコの家から近い所か、ヨッシーの家から近い所。そのどちらかのファミレスに、ヨッシーとクラコはいるはずだ。というかいてくれないと困る。