第三話-9
沈黙するヨッシー。
だがそれはほんの数秒で、すぐに問い返してくる。
『どうしてそう思ったの?』
「どうしてって。彼女が泊まりにきて、大人なキスもされたわけだろ?なら最後までしないと失礼なんじゃないかと思うんだよ」
『一応クラコに確認してみなよ』
「最後までしていいかって?そんなこと聞けねぇよ。第一、あいつが素直に答えるとも思えん」
『それはそうかもしれないけど。付き合いが長くて、何度もしてるならともかくさ。付き合いたてで、それにまだお互い未経験でしょ?せめて最初の一回をするまでは、了承を得ておくべきだと思うんだけどなぁ』
「そんなもん?よく言うじゃん。『いちいち聞かないで』って」
『えっと、それはドラマの見過ぎ。言われたとしても、やっぱり一回目は聞いておくべきだって。というか、いちいち聞かないでって、つまりオーケーってことだしね』
「うーん。聞くの恥ずかしいんだけど」
『襲おうとしてるのに何言ってるの?どうしてもイヤなら、クラコの荷物にそういうもの≠ェないか、確認してみたら?』
「そういうもの?」
『例えば、そうだなぁ・・・コンドームとか?』
「こんどっ・・・!?あ、あのなぁ!?そんなのクラコが持ってるわけないだろ!そもそも、荷物を漁るなんてできるかよ!」
『わがままだなぁ。僕、リョウのノロケに付き合ってる暇はないんだけど』
「ノロケじゃなくて質問。いや、相談だ」
電話の向こう側で大きくため息を吐くヨッシー。
『じゃあ切るから』
「えっ・・・」
通話は一方的に終了させられてしまった。
せっかく人が真面目に質問してるってのに。それでも親友かっ!
俺は携帯電話を放り投げ、ベッドの上に寝転がる。
「・・・クラコ」
夕飯の前、俺とクラコはここで体を重ねていた。いやらしい言い方だけど、クラコに馬乗りされ体をくっつけて熱いキスをしていたのだから、その表現は間違っていないはずだ。
「どうしたの?」
「うわっほっ!?」
「・・・もう一度聞くけど、頭大丈夫?」
「言い方変わってんぞ」
くそっ、部屋のドア開けっ放しにしとくんじゃなかったぜ。
まさかクラコのやつ、俺とヨッシーの会話(通話)を盗み聞きしてたんじゃあるまいな!?