第三話-8
はっ!?そういえばさっき、姉ちゃんが名前を呼んでいたじゃないか!
三重ちゃん・・・そうだ三重子だ!姉ちゃんグッジョブ!
俺がクラコの名前をど忘れしていただなんて知る由もないクラコは、ただ健気に名前を呼ばれるのを待っていた。
「好きだ。三重子」
言うとクラコは後ろに倒れて壁に頭をおもいっきりぶつけていた。
「だ、大丈夫か?」
「い、いきなり好きとか言わないで。反則よ」
「なんだ?嬉しくて昏倒しそうになったのか?」
「うるさい!」
照れてやんの。可愛いやつめ。
「夕ご飯食べるんでしょ。ほら、行くわよ」
そう言って俺の上から下りようとするクラコの腕を掴み、顔を引き寄せて唇を奪った。
「っ!?い、いきなり何するのよっ!?」
「なんだよ。クラコだっていきなりだったろ」
「わ、私はキスするからって言った。あとクラコ禁止」
「じゃあキスする」
「んんっ!?」
もう一度唇を奪い、すぐに離す。
離して、思わずドキリとした。
クラコが、とろんと頬を緩ませていた。はっきり言ってかなりグッとくるものがあった。
夕飯でさえなければ、ぎゅっと抱きしめて、キスして、最後までしたくなるような・・・。
「ご飯だっつてんでしょ!」
今度は階下から姉ちゃんの叫び声。いい加減空気を読めと言いたい。
その叫びで我に返ったらしいクラコは、足早に部屋から出ていった。
「・・・」
指で唇をなぞる。
クラコの唇が触れた部分。
今さらながら、かなり恥ずかしくなってきた。
「誰だよ・・・今までどおりに接するって決めたやつは・・・」
四人で今までどおりの関係を。そう決めたのは、他ならぬ俺とクラコなわけなのだが。
***
姉ちゃんに「もしかして邪魔しちゃった〜?」と悪意のこもった笑みと共に茶化されながらも夕飯を食べ終え、一番風呂のクラコを部屋で待つ間、俺はヨッシーと電話していた。
『そっか〜』
内容はと言えば、もちろんとうとうクラコとキスができたことについて。
「で、さ。質問があるんだけど」
『うん。僕に答えられることなら、なんだって答えてあげるけど』
「そうか。それじゃあ聞くけど。あいつ泊まっていくみたいなんだが、それって襲ってくれってサインだよな?」
『・・・』