第三話-6
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ヨッシーとクラコの会話(通話)を最後まで聞くことなく帰宅すると、なぜか家にクラコの姿があった。母さんと夕飯の支度をしている。
「で、何してんの?」
「何って何が?」
質問に質問で返された。
「ちょっと凌駕。どうして話してくれなかったのよ」
母さんが割って入ってくる。彼女との甘い(?)時間を!
「は?」
「倉敷さんと付き合いはじめたんだって?びっくりしちゃったわよ」
話したのか?とクラコに目で訴える。当然のように首肯された。
「そう?私はようやくか〜って感じだけど」
雑誌を読んでる姉ちゃんまでもが話に入ってきた。
家族に話すつもりはなかったのに。
「倉敷さん。あとちょっとで終わるから、もういいわよ」
「お気遣いありがとうございます」
クラコはちらっと一瞬俺と目を合わせると、何も言わずに居間から出ていった。俺は慌ててそれを追いかける。
クラコが向かった先は当然のごとく俺の部屋で、そこには見慣れないーーいや、旅行などでクラコが使っていた赤いキャリーケースがあった。
「なんだこれは」
「私の荷物。リョウの部屋に泊まるから」
「泊まる・・・?何も聞いてないけど」
「そりゃあね。言ってないもの」
なるほど。それじゃあ俺が知らないのも無理はない。何せ今聞いたのが初めてなのだから。
「って待て。俺に断りもなく俺の部屋に泊まるつもりか?」
「イヤなら帰るけど」
「イヤじゃ、ないけど・・・」
ヨッシーやユイを含んだ四人で寝泊まりしたことは何度もあるけれど、クラコと二人でというのは今まで経験したことがない。おまけに俺たちは恋人同士なので、よからぬ想像をしてしまう。
「じゃあ決定ね」
「一応聞いておくけど、同じ部屋で寝るのか?」
「そうよ。同じ部屋の同じベッドの上で寝るの」
な、なんだ?今の言い方だと、まるで誘っているみたいじゃないか。いやしかしクラコに限ってそれはないか。
「ね、ねぇリョウ」
「な、なんでしょうか」
「なぜ敬語。こほんっ!リョウ、その、ベッドに横になりなさいよ・・・」
「・・・・・・え?」