第三話-4
「やっぱり今年も海でいいかな」
「海は夏に行ったほうがいいよ。またみんなでバーベキューとか花火しようよ」
「懐かしいな・・・」
夏になると必ず海やプールに行き、秋は果物狩りを兼ねたピクニック。冬はスキー山に行き、春はお花見。ついこの間も花見に行ってきたばかりだ。
この二年間はそんな楽しい時間を過ごしてきた。ユイによれば、俺たちみたいな奴のことをリアルが充実している人と言う意味を略して『リア充』と呼ぶらしい。
「卒業したら、今までどおりってわけにはいかないのかな」
「今みたいに毎日のように会うことはなくなるだろうね。進路もバラバラだし」
「進路、か・・・」
卒業したらどうするのか、俺は未だに決めていない。
クラコは医者、ユイはOL、ヨッシーは調理師だったか。みんなが未来予想図を眺めている中で、俺だけが後ろからその様子を傍観している。
「リョウ。やりたいことがないなら、とりあえず大学は出ておけば?その方が仕事の幅も広がるだろうし、通ってる中でやりたい仕事が見つかるかもしれないよ」
「大学・・・それは視野に入れてるんだけど、みんながいない学校っていうのもな・・・」
「高校入学するまで、僕たち会ったこともないじゃないか。ひょっとしてリョウ、僕たちに依存してる?」
依存。
それは、言われてみればそうかもしれない。みんなと離れたくない。ずっと一緒にいたい。クラコやユイも同意してくれたから当たり前だと思っていたけれど、この気持ちは依存なのかもしれない。
「僕たちもみんなと離れるのはイヤだよ。でも、今みたいには無理でも、たまぁにでも集まって、みんなでわいわい騒げる時間はあると思うんだよね。大人になっても」
「そうかもしれないけど・・・。いっそ医大でいいかな・・・」
「クラコと同じ道ってこと?医者になりたいなら構わないけど、ただクラコと一緒にいたいだけなら、僕は反対だな。きっとクラコもそう言うよ。ユイは賛成しそうだけど」
「わかってる。ただ言ってみただけだ」
将来。少し前までは、そんなこと全く考えていなかった。というより考えようとしていなかった。みんなと一緒にいられるならなんでもいいやなんて、そんな適当なことを思っていた。