第三話-3
ユイが話してくれないなら、クラコかヨッシーに聞くしかない。
クラコはやっぱり話してくれないだろうから、ヨッシーに聞いてみるか。
「ありがとな。話してくれて」
「リョウ、ごめんね・・・いつか、話せる時がくると思うから・・・」
「ああ。その時まで気長に待ってるさ」
俺はユイにそう言いつつも、ヨッシーの家へ向かうのだった。
***
「そっか、聞いたんだ」
ユイから天涯孤独であることを聞いた旨を伝えると、ヨッシーは神妙に頷いた。
「ヨッシー。ユイは俺にだけ秘密にしていた。その理由、お前は知ってるんだろ?」
「まぁね。でも、いくら聞かれたところで教えるわけにはいかないよ」
ヨッシーは机の上にフォークを並べ、ニヤニヤしながら眺める。
「もし教えたら、僕はユイとクラコに絶交されちゃう」
「絶交って、そこまでして知られたくないのかよあいつは・・・」
もし俺が知ったら、俺がユイと疎遠になるとでも思っているのか・・・?
馬鹿らしい。今さら何を知ったところで、極端に言えばヨッシーが犯罪者だったとしても、距離を置くなんて考えられない。そうなったら説得してでも自主させる。
「頼むヨッシー。教えてくれ」
「・・・ごめん、リョウ。例え絶交されなくても、僕から言うことはできないよ」
「どうしてもか?」
「うん。どうしても」
ヨッシーの瞳を真っ直ぐに見据える。
強い意志を感じさせる。それほどまでに真剣な眼差しだった。
「わかったよ」
嘆息し、俺はヨッシーから聞き出すのを諦めることにした。
ヨッシーでも教えてくれないんじゃ、クラコに聞き出すこともできないだろう。
こうなったらユイに言ったとおり、教えてくれるまで気長に待つことにしよう。
「さて。もうすぐゴールデンウイークだな」
「無理やり話題を変えたね」
「違う。教えてくれないから話題を切り替えたんだ」
「まあいいけど。それで?」
「今年はどこに行くか、そろそろ決めたほうがいいんじゃないかなと思うんだが」
去年は俺の提案でみんなで海に行った。行く前は『どうしてこんな時期に海なのよ』とか文句も言われたが、実際に行ってもやっぱり文句を言われた。たしかにちょっと寒かったもんなぁ。