第三話-2
「リョウ・・・」
呆然としていると、背後からユイの声が聞こえた。その声にはいつもの元気さはない。
「ユイ・・・お前に色々聞きたいことがある」
「うん・・・座って」
言われてソファへ座る。ユイはテーブルを挟んで対面の床に座った。
「何かな、聞きたいことって・・・」
弱々しいユイの声を聞いて、俺は抱きしめてやりたい衝動に駆られる。
これから事情を聞くつもりだけど、それによってユイが傷ついてしまわないか心配になる。
だが、俺は聞かなければならない。友達として、できることなら力になってあげたい。
「ユイ。お前、さっき電話で親は居間にいるって言ったよな」
「・・・うん」
「どこに・・・いるんだ?」
「・・・どこにも、いないよ」
どこにも、いない・・・?
「何年も前に・・・死んじゃったから・・・」
ユイの言葉に絶句する。
そして同時に理解する。雰囲気が俺たちの家と違い、まるで両親がいないと思わせられるその理由を。
「じゃあ、お前はどうやって暮らしてるんだ?親戚に世話になってる、とか・・・?」
「親戚は、いない。今は、国の援助でなんとかやっていけてる・・・」
「そうか・・・」
親戚が、つまり身内がいないというのは果たしてどういう気持ちなのだろうか。俺には両親がいて、姉ちゃんがいて、親戚もいる。だからユイの気持ちは正直全くわからない。
「みんなは知ってるんだよな・・・」
「うん。クラコも、ヨッシーも知ってる・・・」
二人は知っていたのに、俺だけが知らなかった。
「なんで俺にだけ秘密にしてたんだよ!俺だって友達じゃねぇのかよ!?」
「そうだね・・・友達だね・・・」
ユイは目を伏せる。まるで何かを隠しているかのように。
俺はその姿に苛立ちを覚えた。まだ何かを隠している。俺は他の二人ほどは信頼されていないのか・・・。
「ユイ・・・俺たちは友達だよな」
「うん。大事な大事な、友達だよ・・・」
「なら教えてくれ。どうして俺には秘密にしていたんだ?」
「それは・・・ごめん。今は、言えない・・・」
ユイはそれっきり黙ってしまった。