第二話-1
高校に入学してすぐーーゴールデンウイーク明けの初日。
仲良くなったクラスメイトと共に、食堂へ赴いた時のことである。
「ねぇねぇ!私も混ぜてー!」
それまで話したこともないはずのユイが、突然なんの前触れもなくそんなことを言ってきたのだ。
「いいけど、名前は?」
「唯!津川 唯だよ!」
明るく元気に名乗るユイ。当時はただうるさいやつだと思ったはずだ。
「んでね、こっちが〜」
と。ユイが横にズレて、メガネをかけたいかにもな優等生ーークラコが姿を現した。
「倉敷 三重子ちゃん!一人でお昼にしようとしてたから、誘拐してきました〜!」
「よろしく」
ユイとは打って変わってぶっきらぼうに挨拶するクラコ。
ちなみに余談だが、クラコは優等生みたいではあるが、実際は全然優等生などではない。
成績も中の上くらいだし、しょっちゅう夜遊びもしている(その大半は俺の部屋で遊んでいる)。
「俺は寿 凌駕。津川さん、倉敷さん。よろしく」
俺はそう挨拶し、クラスメイトもそれに続く。
クラコとユイが対面に座る。
「二人は友達なの?」
「うん!さっきなったばっかりなんだ〜!」
「私はそんなつもりはないんだけど・・・」
「え〜?倉敷さんひど〜い!」
クラコはちらり、と一瞬だけ俺の顔を見やり、すぐに持参の弁当箱に視線を落とす。
蓋を開けると、やや小学生女子受けしそうな可愛らしい盛りつけをされた中身が露わになった。
「それ、倉敷さんが作ったの?」
「そうです。文句ありますか?」
「文句なんてないけど」
ギャップ萌えではないが、俺がクラコのことを気になったきっかけがあるとすれば、間違いなくこの時にあまりにも女の子らしい弁当を見せられたからだろう。
その後他愛ない話をしていると、あっという間に昼休みが終わってしまったのだった。
次の日学校へ行くと、ユイがとんでもない提案をしてきた。
「今日の放課後なんだけど、倉敷さんと二人で寿くんの家に行ってもいいかな?」
昨日初めて話した女の子にそんなことを言われ、俺は『気があるのではないか』と疑わざるを得なかった。
しかし女の子に想われるのは素直に嬉しかったので、俺は快く了承した。