第二話-9
俺が知りたいのは、ユイのこと。
ヨッシーもユイの家がどこにあるのかまでは知らないらしいけれど、それでも、俺の知らない何かを知っているのは明白だ。
「ユイは、両親と仲が悪いのか?」
「そういう話ね。直接本人に聞いたらいいんじゃないかなぁ」
「聞きづらいからお前に聞いてるんだ。クラコは教えてくれないだろうしな」
ヨッシーはむしゃむしゃとカツを咀嚼(そしゃく)しつつも、困ったように唸る。
「何か知ってるんだろ?クラコやヨッシーは、俺の知らないユイの秘密を知っている。そうだろ」
「うーん。でもユイには、リョウにだけは絶対に言わないでって言われてるし・・・」
「やっぱり知ってるのか」
なぜユイは俺にだけ隠そうとするんだ?俺に知られたらマズイこと、なのか?
「リョウ。どうして聞きたいんだい?好奇心?」
「それもあるがな。俺たちは友達だ。友達が困ってるなら、助けたいと思うのは当然だろ」
「またそんな恥ずかしいこと言って」
「とにかく。何か知ってるなら教えてくれ」
ヨッシーはカツ丼を一気に口の中へとかきこむ。
律義にご馳走様と言い、ヨッシーは真剣な表情をする。
「僕の口からは言えない。ユイに聞くべき」
だから聞きづらいと言っとろうに。
「具体的に言わなくてもいい。曖昧な説明でいいんだ」
「ユイは・・・ううん。やっぱり、僕の口からは言えないよ」
どうしても口を割らないヨッシーに嘆息し、俺は覚悟を決め、クラコに聞くことにした。
***
「ユイの家を教えてくれ」
放課後。
ユイをヨッシーに送らせてから、俺は図書室でクラコにそう聞いてみた。
「教えられない」
「ユイに口止めされてるからか」
「・・・ヨッシーね。あの馬鹿・・・」
クラコはブツブツとひとり言のようにヨッシーの文句を言った後、改めて俺に向き直った。
「教えてくれるか?」
「そんなに知りたいなら、尾行したほうがよかったんじゃない?」
「友達を尾行なんてしない」
「そう。なんにせよ、ユイの家の場所は教えられないわ」
どうしても拒否するクラコ。
友達に口止めされているから、という理由以外にも何か個人的な理由がありそうだな。
「なんでだよ。実は路上で生活しているとか?」
「いいえ。普通の一軒家よ」