第二話-7
クラコは何を言っているのか。
俺たちが離れてしまうって?それはない。ユイも言っていた。
昨日だって例によって俺の家で、恋人記念のパーティを四人でしたばかりじゃないか。
「リョウ。別れましょう」
「考えすぎだ。仮に俺とクラコが結婚したって、俺たちは俺たちのままだ」
「だから・・・鈍感だっていうのよ」
それからクラコは黙々と昼飯を食べ、ふとクラコの後ろの席に見覚えのある後ろ姿を発見した。
アホ毛。
それはユイの特徴である。いくら梳かしても直らないんだとか。
「ユイ」
呼びかけると、ユイはビクッとしてこちらを振り向く。クラコも驚いていた。
「わ、わあ偶然!なになに〜?カップルでお食事ですか〜?」
わざとらしくそう茶化し、ユイがクラコの隣の席に座る。
「ユイ・・・もう大丈夫なの?」
「え?うん。大丈夫!昨日の私はどうかしてたの!」
昨日・・・?昨日と言えば、パーティをした日だが。
特にユイにおかしなところはなかった。
「だから心配しないで。クラコはクラコの恋を、大切にしてよ。ね?」
「ユイ・・・」
この二人はこうやってたまに二人にしかわからないような話をするよな。友達なんだし、俺にも話してくれていいのに。
俺はやけ食いとばかりに昼飯を口へとかきこむ。
「リョウ!そんなに急いで食べたら喉つまらせちゃうよ!」
ユイのそんな忠告は、しかし少しばかり遅かった。
俺は喉をつまらせ、液体で流し込もうとしたが飲み物を買い忘れていたことに気付く。
なので俺は、クラコの物であるコーヒー牛乳を許可もなく口に含み、喉につまった物を流し込んだ。
「ちょっと。なに半分以上も飲んでるのよ」
そこは間接キスにドギマギするところだろ、と言いたいところではあったが、俺たちは異性であっても回し飲みをするので、そんな今さらな照れ方をするわけがないのだった。
「わるい。後で買うから」
「まったく・・・」
嘆息するクラコの隣で、ユイがニヤ〜といやらしい笑み浮かべる。
「おやおや、間接キスとはお熱いですな〜!」
「な、なによ。別に普通でしょ、こんなの」
「ヒューヒュー!」
ユイは、まるで何か隠すかのように、わざとらしく茶化している・・・ように見えた。