第二話-6
「みんな・・・ぷふっ」
「な、何笑ってるのよ!クー子もウー子もペン子も、みんな意思を持ってるのよ!」
「そ、そうだな・・・」
クラコの頭の中はお花畑なのである。
ぬいぐるみに話しかけるくらいだからな。
「それより勉強するんだろ?早くしようぜ」
「言われなくてもするわよ」
クラコはクマのぬいぐるみ(クー子)を膝に抱え、英語の問題集を開く。
「なによ」
「いや、二人っきりでこうして勉強するのって、初めてだよなーって」
「そりゃあね。今まではユイやヨッシーがいたもの」
クラコと一緒にいられるのは嬉しい。
けれど何度も言うように、ユイやヨッシー、四人揃って遊ぶのも嬉しいし楽しい。
いつか、離れ離れになる日が訪れるのだろうか。
「そういや聞いてなかったけど、クラコって俺のどこが好きなの?」
「逆に聞くわ。リョウは私のどこに惚れたの?」
「素っ気ない態度とか?」
「なぜ疑問文・・・というか、リョウってマゾなの?」
「違う。いたってノーマルだ」
クラコは話しながらも勉強を続けている。
素っ気ない態度。そんな彼女が、誰かに恋をしたらどんな表情をするのだろう。そう思ったのが、クラコを好きになったきっかけ。
「んで、クラコは?」
「リョウのどこが好きなのかって話?」
「そうだ。友人としてはともかく、男として好かれてる感覚がないんだよな」
「それはリョウが鈍感だからよ。きちんとした理由はあるわ。教えないけど」
「俺は教えたのにか」
「そ。ま、いつか教えてあげるわよ」
そう言い、会話は終わりとばかりに俺に問題集を差し出すクラコ。
仕方なしにそれを受け取り、俺もクラコと同様に勉強をするのだった。
***
そんな恋人らしからぬ関係を続けること、早三日。
「私たち、付き合うべきじゃなかったのよ」
昼休み。
食堂へ行き席についたところで、クラコがわけのわからないことを言う。
「急にどうした」
「このままじゃダメなのよ。ユイが、ユイとヨッシーが離れていってしまう」