第二話-5
***
「遅い」
放課後。
校門で待っていたクラコに話しかけようとすると、先にそう言われてしまった。
「初デートで遅刻って、なに考えてるの」
「い、今までだって遅刻したことはあったろ。今までどおりに接するっていうなら、遅刻も見逃しーー」
「そんなわけにいかないわよ。それとも、別れたいって言うなら、見逃してあげてもいいわよ」
くっ・・・卑怯なやつ。そんなんだからクラコなんて呼ばれるんだぞ。
「ほら、デートするんでしょ?早くして」
遅刻したことはもういいのか、クラコはさっさと歩いて行ってしまう。
というかどこへ行くのだろう。行き先は決めていないはずだが。
「なあ。どこに行くんだ?」
「は?私に聞かないでよ」
「いや、先行してるからどこに行くのか決めているのかと」
「特に決めてない。そもそもデートって、男がリードするものでしょ?」
男女差別反対!恋人なんだから、平等でなければならない!
「もしかして、全く何も考えてきてないの?」
「そのとおり」
「威張らないで。はぁ、なんでこんなのが彼氏なんだろ」
酷い言い草だった。
「そんなに言うならリードでもなんでもしてやる。ありきたりだけど、遊園地とかどうだろう」
「遠いからイヤ」
「わがままめ。なら海だ」
「海開きにはまだ早いわよ」
「く・・・万事休すか・・・」
「なんでよ。まぁいいわ。私、勉強がしたいから、うちにしましょう」
なんでデートなのに勉強せないかんのだ。
しかもクラコの家って、割と行ってるから新鮮でもなんでもない。
***
「で、これはなんのつもりかしら・・・?」
震える声でそう言うクラコ。
「え、勉強っていうのは口実で、ホントはイチャイチャしたかったんじゃ・・・」
「違うわよ!どいて!」
クラコに覆いかぶさっていた俺は、半ば無理やりクラコから離れる。
「ま、まだ付き合ったばかりなのに、そういうのは早いでしょ・・・」
「そ、そうな・・・」
「それに、みんなが見てる」
クラコの部屋には、大量のぬいぐるみが飾られている。みんなとは、そのぬいぐるみたちのことだ。