第二話-2
だが放課後、家へとやってきたのはユイとクラコだけではなかった。
「こんにちは。僕のこと知ってるよね?」
ヨッシーこと溝口 良明。
一年生の時は俺と同じクラスで(この時まで話したことはなかったが)、俺の(後の)親友。
「倉敷さんの彼氏?」
「な・・・!?違います!」
俺の問いに、顔を真っ赤に染めて否定するクラコ。
「じゃあ、津川さんの?」
「ううん。溝口くんは、私のカレー仲間なんです!」
意味不明なことを言うユイ。
どうやら食堂でユイがカレーを食べている時に、スプーンの扱いが素晴らしいなどとはたまた意味不明な理由で話しかけられ、それ以来食堂で顔を合わせる度に相席してるのだとか。
「寿くんはなに辛派?私は甘辛派なんだけど」
「そういうのは特にない。甘辛から激辛まで、何でも好きだぞ」
「うわ〜激辛だって!すごいねぇ。倉敷さんは食べられる?」
「さあね」
私は不機嫌ですと言わんばかりの態度のクラコ。
「カレーを食べようが食べなかろうが、生きていくのになんの支障もないわよ」
その言葉に、シーンと静まりかえる俺たち三人。
空気を変えようとしてか、ユイとヨッシーが遠慮もせずに家へ上がったのに対し、クラコは玄関に立ち尽くしたまま動かない。
「私、やっぱり帰るわ」
やがてそう言うと、挨拶もそこそこに立ち去ってしまった。
「津川さん。倉敷さんは友達になりたくないみたいだけど」
「うーん。でも倉敷さん、教室でいっつも寂しそうな顔してるんだよね〜。私追いかけてくる!」
最後にそう叫んでユイも出ていき、俺とヨッシーはしばらく居間で雑談しながら二人を待った。
ユイがクラコと二人で手を繋いで戻ってきたのは、十分後くらいのことだ。あの時はかなり驚いた。
***
「いでっ!?」
頭に強烈な痛みを感じ、俺の安眠が妨害された。
クラコが丸めた教科書で俺の頭をぶっ叩いたらしい。
「もうお昼よ。いつまで寝てるつもり?」
「彼女なんだし、もう少し優しく起こしてくれよ」
「お断り。これまでどおりに接するって、昨日決めたでしょ」
俺がクラコに告白し、オーケーの返事を貰ったのが昨日の出来事。
昨日は結局恋人同士でするようなことはできなかった。キスくらいはしたかったのだが。