第一話-1
季節は春――俺は、俺たちは高校3年生になった。
高校に入学して2年、俺たちがつるむようになってからも2年。
「リョウ。ぼーっとしてるけど、考え事?」
「ああ……少しな」
俺の部屋には、いつものように三人の友人が集まっていた。
話しかけてきた、ベッドに腰かけて首を傾げているのは倉敷 三重子。俺たちはクラコと呼んでいる。
呼び名の由来は、いつだったかクラコがぬいぐるみに話しかけているのを偶然にも目撃してしまったため、ぬいぐるみに話しかける暗い子(どちらかと言えば痛い子だが)+名前の『倉』と『子』=クラコというわけだ。
「はわっ!てややっ!」
ベッドに寝そべって喚きながら一人でポータブルゲームをしているのは、津川 結。俺たちは下の名前でユイと呼んでいる。
一人でと言ったが、正確にはオンラインでネットに繋ぎ、他のプレイヤーとプレイしているので果たしてその表現が正しいのかどうか。
「この芸能人、また再婚したのかぁ」
座椅子をゆらゆらと揺らしながらテレビ画面(ニュース番組)に見入っているのは、溝口 良明。俺たちはヨッシーと呼んでいる。
この時間(午後十時)ならバラエティ番組もやっているだろうに。なぜニュースなぞ見ているのか。
「お前ら、勉強しろよ」
そして俺は寿 凌駕。皆からリョウと呼ばれている。
性別も性格も趣味も考え方も違う俺たち四人は、高校に入学してすぐに仲良くなり、今ではこうして俺の部屋に毎日のように集まって遊んでいる。
否。今日の目的は受験のための勉強会だったはずだが、気付けばバラバラに楽しんでしまっている。
ユイはゲームを続けているし、ヨッシーもニュース番組からドラマへと変えただけで勉強に戻ろうとはしない。
「クラコ。俺たちは何のために集まっているんだろうな」
「勉強するためでしょ?あとクラコ言うな」
そう言いクラコはドラマに視線を移す。
勉強はどうしたと言いたい。
「明日学校なんだし、勉強しないならもう帰れよ」
「僕は泊まっていくつもりだけど」
ヨッシーがそう言うと、ユイとクラコも「私も」なんて勝手なことを言う。
俺の部屋は六畳半しかないので、俺を含めて寝れるのはせいぜい二人。それ以上はキツイ。