第一話-9
「好き、だ・・・」
言った。ついに言ってしまった。
クラコに俺の気持ちをーー。
「なによ。改まっちゃって、恥ずかしいわね」
「・・・え?」
クラコは俺の気持ちに気づいていたって言うのか?
いや待て。それならもっと恥ずかしそうに言ってもいいはず。
一応、確認しておくか。
「クラコ。その、俺が好きって言うのは・・・女としてでだな・・・」
改めて言うと、勉強していたクラコの動きがピタリと止まった。
そして振り向かずに、クラコは訊いてくる。
「本気、なの・・・?」
「あ、ああ。冗談でこんなこと言わない」
「どうしてよ・・・」
「どうしてって・・・」
「ううん。こっちの話」
「そうか・・・?」
どうして好きになったのか、理由を聞かれたのかと思ったがそうではないらしい。
クラコはゆっくりとこちらに振り向き、まっすぐに目を見つめて言った。
「考えさせて」
そして勉強道具を片付け、帰ってしまった。
「言っちまった・・・」
後悔。
つい言ってしまったけれど、 果たして本当にこれでよかったのか。
もしもフラれたら、俺は落ち込むのだろうか。立ち直れるのだろうか。
なんにせよ、そろそろ学校に行く支度をしなければならない。
当然ながら、ユイやヨッシー、そしてクラコとは学校で顔を合わせることになる。
ちょっとだけ、憂鬱な気分になった。
『クラコに告白した』
ヨッシーにそうメールを送り、俺はゆっくりと立ち上がる。
***
俺とクラコのクラスは一緒である。残念ながらユイとヨッシーとは別のクラスだが。
俺は窓際の前から二列目で、クラコは俺の前。
「おはよう、リョウ」
クラコはいつものように挨拶をしてくる。
まるで告白なんてされていないかのような、そんな気さえしてくる。
「あ、ああ・・・おはよう」
「意識しすぎ。みっともない」
指摘されてしまった。
しかし意識するなと言うほうが無理な話だ。というより、どうしてこいつはこんなにも平静でいられるのだろうか。
これじゃ、まるでフラれる前にフラれたみたいじゃないか。
「クラコ、よく遅刻しなかったな」
なんとか意識を切り替え、いつものように話をする。少なくともそのつもりで話しかけた。