第一話-7
最後の部分が聞こえなかったが、今度は哀しそうにうつ向くユイ。
ユイは、後悔していることがあるのか……?
「何騒いでるの?もうおばさん達寝るみたいだから、静かにしたほうがいいわよ」
そこでタイミング悪く、水色のパジャマに着替えたクラコが戻ってきた。
「クラコ可愛い〜!リョウもそう思うよね?ね?」
「そ、そうな」
なんで今俺に振るかな……。
「次は僕が歯を磨く番でいいの?」
そう言いながらも既に部屋から出ていこうとしているヨッシーの腕を掴み、引き止める。
正直、今このタイミングで女二人と三人だけになるのはキツイ。
「俺も行く」
「あ!リョウが逃げた!」
「なんの話?」
文句を言うユイと困惑顔のクラコを尻目に、俺はヨッシーと二人で洗面所へ向かう。
「好きなら好きって言っちゃえばいいのに」
「簡単に言うなよ・・・」
もうお分かりかと思うが、俺が好きなMKとは、即ちクラコのことである。
倉敷 三重子。一見女の子らしくない(失礼)彼女だが、ぬいぐるみ集めという趣味の他にも料理が上手かったり、家では忙しい両親(共働き)に代わり家事をこなしていたりする。
まぁ、それらは好きになってから知ったことではあるのだが、俺がクラコのことを好きな理由のひとつである。
「それにな。俺は今の関係を気に入ってるんだよ」
「居心地いいのは同意するけど、そんなことじゃいつまでたっても彼女できないよ?」
「ま、それもありかな。恋人がいることだけが、幸せとは限らないだろ?」
「そんなこと言って、いつかクラコが他の男と結婚したらどうするの?リョウは祝福できるのかい?」
クラコが結婚・・・考えられないが、あいつもいつか結婚してしまうのだろうか。
その場合、相手はどんな男なのか。ユイのこと以上に気になる。
「ユイも言ってたけど、リョウがクラコに告白して、その結果恋人になろうがならなかろうが、僕たちがバラバラになるなんてことは、絶対にないよ」
その言葉には何の根拠もない。
なのにどうしてユイもヨッシーも、そんな確信に満ちあふれた言い方ができるのだろうか。
「ユイの口からバラされるくらいなら、自分から言ったほうがいいよ」