第一話-6
「俺たちの中の誰か一人に恋人ができたら、どうなるんだろうな……」
今は、今までは誰にも恋人がいなかったから、四人でわいわいばか騒ぎできていたけれど。
例えばユイに恋人ができたら、ユイが遊びに来る回数は激減するだろう。そうなるとユイの親友であるクラコも遊びに来なくなるかもしれないし、もしかしたらヨッシーもそうなるかもしれない。
「変わらないよ」
ぽつり、とユイが言う。
「きっと、変わらない。リョウに恋人ができても、クラコに恋人ができても、今までとおんなじだよ」
だからさ、とユイは続ける。
「好きな人がいるなら告白するべきだよ!」
「どうしてそうなる」
それに、好きな子との関係は今のままでいい。
「私ね、リョウの好きな人が誰か、知ってるんだ」
「……え?」
思わぬ言葉が飛んできた。
次いでヨッシーも「僕も知ってる」などと言う。
「そ、そんなわけないだろ!俺、誰にも好きな子のことを話したことないんだから!」
「話さなくてもわかるよね、ヨッシー」
「うん。バレバレ」
「ち、違う!きっと二人が思ってるのとは違う子だからな!」
「じゃあ名前言っちゃうよ?イニシャルはー、M・K」
MK。Mが下の名前でKが苗字、とすると……。
どくん。
心臓が跳ね上がる。こいつらは本当に、俺が誰のことを好きなのか知っている……!?
「二年も一緒なんだし、気付かないほうがおかしいよねぇ」
「うん。気付いてないのは本人だけじゃないかな〜」
ずっと隠してきて、誰にも明かしたことのない気持ち。
だけど、隠しきれていると思っていたのは俺だけで、ユイとヨッシーにはバレていたってのか。
「というわけで、明日は学校で告白イベントだね!」
「ちょっ、はぁっ!?」
勝手に話を進めないでほしい。
「ユイ、ヨッシーも。真面目な話だ。俺は告白する気は一切ない」
「リョウ。私も真面目な話。明日告白しなかったら、私がMKに話しちゃうから」
「か、勝手なことするな!俺は今の関係がいいんだ!」
俺が怒鳴ると、ユイは儚げに微笑んだ。
「伝えたいことは、伝えられる時に伝えたほうがいいんだよ。じゃなきゃ、後悔しちゃうんだよ…………いに」