第一話-5
「どうしてそんなに気になるの?」
「興味本位」
「ふーん。ユイのこと、好きだったりして」
「なんでそうなる。ユイのことは、というかお前らのことは友達として好きだけど、それ以上の相手には見れないな」
「だって、ヨッシー」
「僕に話を振られても困るんだけどなぁ」
とそこで、歯磨きが終わったのであろうユイが戻ってきた。しかもピンク色のパジャマに着替えている。
「お姉ちゃんのパジャマ、貸してもらっちゃった!クラコの分もあるって」
「そう。なら私も、歯磨きがてら借りてこようかしら」
ユイの横を通り抜け、クラコが部屋を退室する。
「よく姉ちゃんのパジャマなんか着れたな」
「どういう意味!?胸の辺りがぶかぶかだけど、ちゃあんとパジャマとして機能してるもん!」
「さいですか」
姉ちゃん。巨乳で社会人。ユイはなぜか『お姉ちゃん』と呼んでいる。
「あ、プリン!私の分は?ねぇねぇ私の分は?」
テーブルの上に置きっぱなしのプリンの空の容器を見て、ユイがそう訴えかけてくる。
「クラコの腹の中だ」
「食いしんぼ!」
「俺に言うなよ……」
特に理由はないが、強いて言うならなんとなく、俺は前触れもなしにユイのほっぺたをつねった。
「あにしへんの!?」
「ユイ、好きな男いるんだって?」
俺の唐突な問いに、ドラマを見ていたヨッシーがびくっと肩を震わせた。
ユイがヨッシーの後ろ姿を睨みつけたのだ(ほっぺたをつねられたまま)。
「ぼ、僕は知らないよ。クラコがつい口を滑らせちゃったんだ」
とぼけるヨッシー。
クラコを犠牲にするとは、なんてやつだ。
「いるへろ、ろうかしら?」
いるけどどうかした?と言っているのだろう。
「いや、気になって。どんなやつかなって。俺も知ってるやつか?」
「ほっへたふねるひろには、教えまへん」
ほっぺたつねる人には教えません、か?
俺はほっぺたから手を離す。
「離したぞ。誰なんだ?」
「内緒でーす!」
「教えてくれたら、そうだな……ユイの欲しいフィギュア、一つだけ買ってやるから」
「ほんと!?」
俺の提案に、目を輝かせるユイ。
「プレミアついて六万円のやつでも!?」
「ろくま……ごめん。なかったことにしてくれ」
さすがに六万円払ってまで知りたい情報ではなかったので、俺は提案を取り下げた。