第一話-4
ちなみに一部の連中からは『乱交グループ』と呼ばれているらしい。
もちろんそんなことはした覚えがないし、俺やヨッシーがクラコやユイと付き合っているという事実もない。
「というかヨッシー。お前が告白したなんて初耳なわけだが」
「あれ?言ってなかったっけ?二組の佐藤さん」
「全然聞いてない。クラコは聞いてたか?」
「まさか。じゃなきゃ、彼女作らないの、なんて聞かないでしょ」
それもそうだ。俺はともかく。
彼女はいないが、好きな子はいる。
「…………」
「何。私の顔に何かついてる?」
クラコの顔をちら見していると、不思議そうに尋ねられた。
「いや、お前こそ彼氏作らないのかと思って」
本当は別の理由で見ていたのだが、そのことは絶対に口にしてはならないし、知られるわけにもいかない。ヨッシーですら知らない『機密事項』なのだ。
「周りにまともな男がいないもの」
クラコはそう言っていやらしい笑みを浮かべて見せる。
俺とヨッシーも含まれていると言いたげだった。
「ユイは?モテそうだけど」
「あの子は……作る気ないわよ。告白は何度かされてるみたいだけど、みんなフッてる」
「実は女好きとか?」
「ユイはノーマルよ。普通の男の子が好きな女の子」
言って、しまったというように右手で口を押さえるクラコ。
「ユイの好きなやつってどんなの?」
「そういう意味じゃなくて、女の子が好きな同性愛者じゃないってことを言ったのよ」
「いや、今の言い方は好きな男がいるって感じだった」
なおも食い下がる俺。
一見無邪気で子供っぽいユイが好きになる男。友人としては、非常に気になるところである。
「なあヨッシー。何か知ってる?」
「うん。ユイは恋する乙女だよ」
ヨッシーの言葉に嘆息するクラコ。
疎外感。
俺だけ仲間外れにされてる気がする。
「ヨッシー。まさかユイの好きな男が誰なのか、知ってたりするのか?」
そう聞くと、ヨッシーはクラコに視線を巡らせた。
クラコはふるふると首を横に振る。
「さあ。知らないかなぁ」
俺はクラコの瞳を見つめる。
「クラコは?」
「ノーコメントで」
せこい逃げ方だった。