Present-6
「・・・・・・」
領主の姿が視界から消えて室内に1人残されたセリスは、
ここで自分にあてがわれた部屋を見回した。
別棟とはいえ、かつて領主も使っていたことのあるという“寝室”という名の憩いの空間。
天井には豪奢ではないが、相応の風格を感じさせるシャンデリラが吊るされ、
壁には素人目にも高価に見える風景画が何枚か掛けられている。
領主の言葉を借りると、最近はあまり使っていなくて埃を被っているところもあるということだった。
しかし当のセリスから見れば、古めかしくも小綺麗に整理されシーツも新しいものへと入れ換えられている程に整えられていた。
床一面に敷かれた茶色の生地で編まれている絨毯も、紋様や年数は古典を思い起こさせるが決して程度の悪いものではない。
まるで最初からセリスの宿泊を想定していたかのように。
「ふぅぅ・・・・・」
領主の下心を薄々察しつつセリスは肩からかけていたショールを外し、
部屋の中央に置かれたソファの背もたれにかけようとした。
そこで彼女は部屋の中央にあるものを、否応なく視界の中央に据えることになった
古典的装飾の施された4脚の卓。
その卓の上に置かれた “2つの厚紙の箱”。
1つは比較的底はなく底辺は広い。
もう1つはどこか小さな置物が入っていそうな大きさと底。
「・・・・・・・」
もう夜も遅く、中身を確認するのは明日以降いやフィガロ城に戻ってからでも十分可能。
だがセリスは酔いが覚めてきた中、
思わず卓に近づき幅のある長い箱を手に取っていた。
何となく領主の思惑通りに進んでいるような気分だったが、流石のセリスもどのような人間にも訪れる“好奇心”というものに抗うことはできなかった――――