Present-4
「・・・そう言えば、いつだったかジドールの富豪アウザーも口にしておりましたよ。
“セリス様は戦士から王妃へと変わられる中で、全ての男を惹き付ける魅惑と気品を手にされた”と」
( !!! )
意外な人物の口から意中で眠っていた人物の名前が飛び出したことに、
セリスは危うく声を出しかけた。だが辛うじて言葉を飲み込み、一見表情を変えないように努める。
これが昼間なら、セリスの顔色がやや赤みを帯びていることが如実に分かったであろう。
「アウザーとは先代・・・つまり父親の代から懇意にしておりましてな。息子の方は暇を見ては顔を出してくれて、色々話をする仲なのですよ。
・・・・・セリス様はアウザーのことをご存じでしたか?」
「ええ・・・エドガーとは古い学友繋がりで、以前にもフィガロ城に来てくれたことがあります」
「ああ、左様でしたか。道理で・・・・・」
セリスが僅かに示した動揺にも素知らぬ態の領主
セリスとはやや距離を空けつつも、ベンチの空いている箇所に腰を下ろしつつ次の話題へと話を進めていた。
――――庭先で話し込んでいる2人を尻目に、
館の中のパーティーは未だに熱気が冷めることもなく続いている。
エドガー自身どこへ行ったのか、セリスの位置からはその姿は見えない。
庭先には何組か談笑する男女のグループがいたが、 流石にセリスや領主のいるベンチには近づいてこなかった。
ここでセリスは既に予想以上に夜も更け、今からサウスフィガロに戻るには遅くなりすぎたのではと少々心配になってきていた。
「・・・しかし今夜は予想以上に遅くなってしまったようですな。
・・・いかがでしょう、セリス様。こちらで部屋を用意させますので、そろそろお休みになられては」
そんなセリスの心中を察したかのようなホスト役の意外な一言に、
主賓役の王妃セリスは思わず相手の顔を見返してしまっていた。