君を諦めたくない1-9
そして奴はそれっきり自分の気持ちを封印したかのように、俺と芽衣子のことを支えてくれるようになった。
例えば、俺達が喧嘩しても仲裁してくれたり、誕生日やクリスマスなんかのイベントを控えても一向に何の準備もしてない俺に、“芽衣子の喜びそうなとこに連れてってやれ”と説教したり、いろんな形で応援してくれていた。
こんな風に久留米が散々俺達の応援してくれたのは、芽衣子の笑顔を見たいがためだったのだろう。
そんな久留米が俺と芽衣子の間に揺さぶりをかけてくるなど夢にも思わなかった。
だから、久留米がこうやって芽衣子に想いを告げる様子を目の当たりにすると、激しく胸がバクバク鳴り出し、背中に汗がジワリと滲んでくる。
久留米は、俺が芽衣子の元から去ったもんだと思っているし、彼女の支えになれるのは自分だけだと思い込んでいるのかもしれない。
俺は当然それを認めたくないけど、死人の俺には口を挟む余地はない。
生きている芽衣子を幸せにできるのは、死んでいる俺ではなく、生きている久留米なのだから。
芽衣子の恋人という役割はこのまま久留米に奪われてしまうのか?
自然と奥歯に力が入り、二人から目を逸らしてしまう。
「まあ、いきなりこんなこと言われたって混乱するよな」
久留米は小さく笑って頭を掻いた。
「久留米くん、あたし……」
「ああ、いいんだ。今すぐ答え出せって言ってるわけじゃねえから。
でも、どうしても自分の気持ちだけは伝えておきたかったんだ。
オレは初めてお前に会った時から、ずっと好きだった。
正直、友達関係をぶち壊してでもお前をオレのものにしたかったんだ。
でも、お前の気持ちは気付いていたし、茂と付き合った時はさすがに諦めないといけないと思って、他の女と付き合ったりしてたんだけど……」
久留米はそこまで言ってから、急に苦々しい顔をした。