君を諦めたくない1-7
「今日、お前があんな目に遭ってしまってなおさらその気持ちは強くなった。
あんな怖い思いしたお前をこのままほったらかしにしたくないんだ。
オレ、もうこれ以上お前が泣いてるとこなんて見たくねえ」
久留米の顔は真っ赤だったが、真剣そのものといった強い眼差しでじっと芽衣子を見つめていた。
芽衣子は、そんな久留米の視線から逃れるように顔を俯かせていたが、髪がかけられていた耳は真っ赤になっていた。
「久留米さん、真っ直ぐでかっこいいですね。
私が女なら迷わず彼を選ぶなあ。
こんな素晴らしい人に想われてるなら、間違いなく幸せになれますよ。ね、手島さん?」
チラッと園田が俺を見る。
コイツが俺にそう話しかけてくるのは、絶対わざとだ。
すかさずまた園田の頭でも叩いてやるつもりだったけど、なぜか手が出せなかった。
いつものパターンにならなかったことに、園田は意外そうに口をすぼめて俺を見つめていた。
……園田の言うとおりだ。
久留米なら、絶対芽衣子を幸せにしてやれる。
俺みたいに浮気なんてしないだろうし、芽衣子にばかり働かせたりしないだろうし、芽衣子の金に手をつけたりしないだろうし、芽衣子を殴ったりなんて死んでもしないだろうし。
久留米がどれだけ芽衣子を好きかなんて俺はわかっていたくせに、そのことからずっと目を背けて気付かないフリをしていたんだ。