君を諦めたくない1-5
こんな深刻な場で、何が悲しくてこのオッサンと映画談義しなければいけねえんだ。
慌てて芽衣子に視線を移すと、彼女はまだ“ゴースト”のDVDを少し微笑みながら眺めていた。
芽衣子と違って、俺はこの手の恋愛映画は苦手だった。
映画の中でイチャイチャしてるのを観てると、なぜだか身体が痒くなってくるのだ。
だから、芽衣子にこのDVDを一緒に観ようと言われても、途中で寝てしまったり、コンビニに出かけたりしたりで、結局最後まで観たことはないのである。
さらに付け加えるなら、久留米だってこんな甘ったるい映画は苦手なのだ。
奴は俺と同じで、どちらかというとアクションとかSFのような観ていてワクワクするような映画が好きなのに、芽衣子が“これがいちばん好きな映画なの”と言った途端、いそいそと借りて行った。
久留米が芽衣子の嗜好を理解したくて借りたんだってのはわかるけど、そこまでするかあ? と半ば呆れながら久留米を見ていたことを思い出す。
でも、今はそんな久留米の強い想いが痛いほど俺を不安にさせた。