君を諦めたくない1-13
芽衣子は部屋を見渡し、何か気配を感じようとしているように見える。
それが一生懸命俺の姿を探しているようにも見えて、嬉しくなってくる。
まだ、芽衣子の心の中にはちゃんと俺がいたんだ。
彼女の目に俺の姿が見えるのならば、強く強く抱きしめられるのに。
そして言ってやるんだ。
久留米のとこになんか行かないでくれって。
でも、実際は俺の姿は見えない。
声も届かない。
触れてはいけない。
制約の多い今の状態がとても歯がゆい。
なあ、芽衣子。
もし俺が生きていて、久留米が同じように想いをぶつけてきたらお前はどんな答えを出すのかな。
「芽衣子、お前は今誰を想ってる?」
届かないとわかっていても、俺は芽衣子に問いてみた。
次の瞬間、芽衣子はフッと小さく笑った。
俺の声が聞こえたのかと思わずハッと息を呑んだ。
だが彼女は、
「……なわけないか」
とだけ言って、ベッドから降りると、そのままシャワーを浴びに行ってしまった。
結局俺の存在には気付いてもらえなかったけど、名前を呼んでくれたことが嬉しくて、俺は口元が少しだらしなく緩んでしまった。