君を諦めたくない1-12
芽衣子は身体を起こすと、腑に落ちない顔で首を傾げ黙り込んでいたが、やがて
「茂?」
とポツリと呟いた。
その瞬間、俺はみるみる目を見開いて、虚空を見つめる芽衣子の前に立ちはだかった。
「芽衣子、気付いてくれたんだな!
俺、ずっとお前のそばにいたんだぞ!」
感激のあまり、両手を広げて芽衣子に抱きつこうとしたら、
「……ついさっき見知らぬ男に襲われて、ここでも姿の見えない霊に抱きつかれたら、トラウマになっちゃうんだろうなあ。
かわいそうに、これじゃあ怖くて怖くて久留米さんなしでは生きて行けなくなるんだろうな。
ああ、でも彼なら幸せにできるから大丈夫か」
と、園田が部屋に貼ってあったカレンダーを見ながらわざとらしく独り言を呟いてきた。
両手を広げたまま引っ込みのつかなくなった俺は、頭が痒くなった振りをして、シャンプーでもするように髪をグシャグシャかきむしった。
今日の園田は一段と憎たらしい。
それでも、俺は奴の挑発には乗らずにその存在をシカトしてやった。