君を諦めたくない1-10
「でも茂の奴、だんだん浮気繰り返したり、芽衣子に手を上げるようになってしまったろ?
そのたびに泣いてるお前見てたら、気持ち抑えられなくなってきた。
芽衣子を泣かせてばかりの茂がどうしても許せなかった。
だから、オレは茂をぶん殴ったんだ。
あん時、無理矢理にでも茂から芽衣子を奪ってやるつもりでな」
あの時、俺を殴った久留米の鬼気迫るような表情は今でも目に焼き付いている。
あの時のコイツは、そう思っていたのか。
「でも、お前はそれでも茂を選んだだろ?
やっぱりオレじゃダメなんだってすげえへこんだわ」
そう言って奴は自嘲の笑いをもらした。
久留米に殴られ、倒れた俺に寄り添う芽衣子を見つめていた時の奴の顔は、悔しさと、苛立ちと、どことなく悲しげな顔をしていたのをぼんやり思い出す。
「アイツがいなくなった今、こんなタイミングで告白なんかしちまって、お前にとっちゃ茂の後釜狙ってるように思うかもしれねえけど、それでも構わない。
もしお前がオレのこと選んでくれるんなら、これから先絶対に幸せにする。
だからお前もよく考えて答えを出してくれ」
そこまで言い切った久留米を、芽衣子は真っ赤な顔で瞳を潤ませて黙って見つめていた。
俺の隣で、園田が感銘を受けたようにホウッと熱いため息を吐く音が聞こえた。
俺だけが歯を食いしばり、眉間に深い縦じわを作りながらただ黙ってガックリとうなだれたまま久留米の想いを聞いていた。