前章-16
「ぐ……し、締まりが……ああ……」
「ふぐぅ!ふう!くうん!」
尻肉を打ち付ける音が激しさを増して行く。菊代は寝衣の裾に歯を立て、抉られる度に挙げそうになる嬌声を堪えていた。
「ど、どうだい……菊代。息子の魔〇に……う、尻の穴まで……犯された気分は」
「嫌あ……そんな言い方……しないで」
「初めてなのに……がっちり食わえ込んで……くっ、あんあんと喘ぐ様は、とても子持ちとは思えないよ」
「や、止め……ああ……」
底意地の悪い言葉を耳許で囁かれ、菊代は興奮の度合いを更に高めて淫茎を更に搾り上げる。
「あぐ!……が、もう我慢が」
急に増した亀頭への圧迫が伝一郎から余裕を奪い去る。狂乱しそうな程の快感が、一気に脳天を突き抜けた。
彼は呻き声を放ちつつ、狂った様に腰を振り続ける。最早、人間としてで無く、獣の本能の赴くままに。
「んああ!ああ!くああ!」
「ぐっ!……がああ!」
二人は略、同時に昇天した。
菊代は小さな痙攣を見せた後で、四つん這いの体勢から力無く頽(くずおれ)た。伝一郎も幾度もの射精を繰り返し、放心した様子のまま菊代に覆い被さる。
「はああ……あん」
繋がりが解かれ、菊代は余韻の中で喘ぎを漏らした。開いた菊門からは、我が子が放った“狂熱の断片”が伝い落ちて来る。二人は、汗にまみれた身体を抱擁し合い、荒い息遣いのままに幾度と無く接吻を交わした。
「どうだった?……尻の穴で目交わうのは」
夢現(うつつ)な心地の中で菊代は思う──新たな繋がりは自らの身体に、二つと無い快感を覚え込ませてしまった。
これにより伝一郎は更なる増長を顕し、自分は更に抗う心を無くしてしまうと。
「──菊代」
余韻の中で伝一郎は訊いた。
「菊代は何故、あんな奴を好きになったのさ?」
この言葉を合図に、菊代の中に不穏な想いが涌き上がった。
最近、彼女を悩ませるもう一つの事柄。事有る毎に、伝衛門と交わしていた過去を知りたがるので有る。
「……あの頃は、本気で好きだった。女の私なんかじゃ描け無い夢を、追い掛けていたから」
菊代が仕方なく、思い付くままに応えると、伝一郎はそれが気に入ら無いらしく、苛立たし気な表情を見せた。
「……確かに、私財を投げ売って起業した先見は素晴らしいと思うよ。
でも、俺も菊代も父さまのせいで、辛い目に遇わされたんじゃないか!」
大き過ぎる父親への嫉妬──嫡子と為って五年。知れば知る程、その大きさに畏怖し、後継者と為る道の険しさを感じているのだ。
菊代は、直ぐに必要な処置を講じる。
「今はもう、関係の無い人よ。私には貴方しか見えてい無いのよ、伝一郎。母としてじゃ無く女として、貴方に抱かれてるの」
「菊代……」
「だからこそ、千代子も幸一も産んだのよ」
菊代はそう語り掛け、自ら口唇を重ねた。熱い接吻が繰り返され、三度、事が始まりそうな気配と為った。