前章-14
「伝一郎……」
「ねえ、お願いだよ……ちょっとだけで良い。ちょっとだけで良いから、此処に置いてよ」
涙ながらの哀願を、退けられ無かった菊代の負けで有る。
久々に優しく抱きしめた我が子は、随分と背も伸びて、少しだけ男の匂いがした。
その後は、済し崩しで有る。幾らと掛からずに再び目交わう仲に陥り、以降は毎年、夏季休暇前夜から訪ねる様に為った。
「本当は菊代も、望んでたんだよね?」
そこまで言った伝一郎は、菊代の手を掴んで引き寄せた。
「や、止めなさい」
強引さに菊代の寝衣は乱れ、裾の合わせ目から太腿が顕に為る。伝一郎は大胆にも両腿の間に手をこじ入れた。
「嫌あ……」
「今だって……嫌がる手に、力が入って無いよ」
敏感な部分を、我が子の指が巧みな動きで弄り出すと、瞬く間に液を掻き混ぜる音が伴い出した。
「菊代の此処は過敏だ。あの頃から、ちっとも変わってい無い」
「やああ……ん」
熱い息遣いと下から突き上げて来る快感。菊代は抗う心を忘れ、母から唯の女となって伝一郎の口唇にむしゃぶり付いた。
「ふっ……んん……」
息苦しい程の接吻を交わす二人。舌先が激しく動き、互いの口腔内を舐め合い、刺激する。
「ああ……菊代、菊代」
脳内は次第に痺れて、自制心や思考力が著しく薄れて行くと、代わって情欲が大部分を占め出す。人間の、特に女性の五感はどんどん々研ぎ澄まされて行き、全ての感覚が快感へ通じる様に変化する。即ち、全身が性器と化すのだ。
「うん!……で、伝一郎」
そんな女が見せる艶かしい反応に、男は著しい欲情を覚え、淫茎を怒張させる。自らの胤を女の膣内(なか)に迸らせたいと。
「もう我慢出来ない……挿れるよ」
「はあ、はあ……来て」
目交わいによって得られる快感は何物にも代え難く、目も眩むばかりで有る。何故、子を成すだけの行為に、これ程の快感を必要とするのだろうか。
犬や猫の畜生も、目交わいによる快感が伴う様だが、畜生等には目交わう期間は限られており、人間にはその期間等と言う物は無い。逆に言えば、しょっちゅう発情出来る状態に有る訳だ。
「あん!……うん!……あっ!」
「ああ……膣内が吸い付く様だ……」
子を成さぬ行為にまで快感を及ぼす事に、意味は有るのだろうか。唯、快楽のみを追い求めるのは堕落した行いで有るが、人間に自制するだけの精神力を備えろと言うのは甚だ難しい。
「ああ……い、逝きそうだ……菊代……俺のを飲んで」
「はぁ、はぁ……頂戴……」
畜生には雌が発情期を迎え無い限り、雄の身体は反応し無い様な仕組みと為ってるが、何故、人間には同様の仕組みを身体に備えて無いのか。