君をやっぱり守りたい-7
「あんの野郎……!」
なおも久留米は男を追いかけようとしたが、やはり芽衣子が
「お、お願いだから一人にしないで……!」
と、震える身体で懇願していた。
すぐに警察に突き出すほどの余裕など、芽衣子には全くなかったのだ。
それを察した久留米は悔しそうな顔をしていたが、渋々追うのを諦めると、ゆっくりしゃがんで芽衣子と目線を同じ高さに合わせた。
「大丈夫だったか?」
震えながらもなんとか頷く芽衣子。
久留米は心の底から安堵したように大きく息を吐いた。
「あ、あ、た、あたし……あた……し」
芽衣子は何か言いたかったようだが、よほど怖かったのだろう、ガチガチと歯を鳴らしていてまともに喋れなかった。
「無理して喋んな、もう大丈夫だ」
久留米はそう言って、震える芽衣子の頭を優しく撫でた。
その瞬間、芽衣子の大きな瞳からさらにボロボロ涙が溢れてきて、そのまま久留米の胸に顔をうずめてワアワア大声で泣き出した。
そんな二人を俺は複雑な表情で見つめていた。
……俺だってお前を守ったつもりだったのに。
俺の想いが何一つ伝わっていなかったことに対し、ただ下唇を噛み締め、オタク野郎を殴った拳を見つめることしかできなかった。