君をやっぱり守りたい-3
しかし、久留米にはそれすら怒りで見えてないようで、どんどん近付いていっては、今度は倒れ込んだ男の腹を踏みつけるように蹴りを入れた。
そして呻く男の襟刳りをもう一度掴みあげ、その身体を立ち上がらせると、また顔面に思いっきり拳を突き立てていく。
何度もそれを繰り返す久留米の様子に背中がゾクッと寒くなった。
ヤバい、こいつブチ切れてる……!
男の顔は大量の鼻血と口から溢れてくる血で胸元が真っ赤に汚れていた。
久留米の手やスーツにも返り血が付着していて、奴は不愉快そうに時折手を上下に振って血を払っていた。
それだけの血を目の前にしても、さらに奴は一向に手を休めず男に攻撃を繰り返していた。
男を殺してしまうんではないかという久留米の勢いに膝がガクガク震えてきた。
「て、手島さん! 久留米さんを止めないと、あの人死んじゃうかも……」
「わ、わかってるよ!」
わかっていても、動けない。
初めて見たキレてる久留米の様子にビビっているのはもちろんだが、相手がナイフを持っていても構わず“芽衣子を助けるため”に飛び込んだ久留米の姿に圧倒されていたのだ。
芽衣子を助けたい、その気持ちは誰にも負けないつもりだったのに、その気持ちですら久留米に負けてしまったような気がした。
蹴りやパンチでフラフラになった男にとどめを刺すように、また力一杯殴りつける。
フラフラになった男は、座り込んだままの震えて動けない芽衣子の上に倒れ込んだ。
またしても芽衣子が恐怖に目を見開いて小さな悲鳴をあげると、久留米も我に返ったようにハッと動きを止めた。
そしてその隙をついた男は、素早く体勢を立て直すと彼女の身体の後ろに回り込んで、その首筋にナイフをあてた。