空に風が吹くように-9
翌日、親父は銀行に行って相談したところ、なんとかこれまで通りに工場を続けられるようになった。俺は安心して東京に戻った。東京に着いてすぐに大事な事を忘れている事に気づいた....風香の事だった....これからの事を何も話してない....一瞬、電話かメールで....とも考えたが、こういう事は直接会って話したほうがいいと思い直して次の休みに会いに行く事にした。
その週の土日は今まで無理を言って休んでいたので、その埋め合わせで休みが消えた。次の週末までにはなんとか仕事を片づけてなんとか休みを取る事が出来た。
「なんとか明日休みを取る事が出来たな....明日いきなり帰ったら風香はどんな顔をするのかな?」
風香の嬉しそうな笑顔を想像すると残業の疲れも吹き飛んだ。
マンションの部屋のドアを開けた時、部屋の灯りが着けたままだった事に気づいた。
「疲れてたから消し忘れたか....」
そう呟いてドアを閉め鍵をかけた時
「お帰り!」
風香の声がして振り返ると、そこに風香が立っていた。
「どうして風香がここに....」
「私がいたら迷惑なの?」
風香は少し怒ったように答えた。
「そんな事ないけど....」
「だったらいいじゃない!」
風香は一度笑ってから続けた。
「空弥がいけないんだからね!」
「えっ?どうして?」
「だって......どうして迎えに来てくれなかったの?私..ずっと待っていたんだからね!だから....ガマン出来なくて来ちゃった....」
「来ちゃったって....親父やお袋はなんて....」
「お父さんやお母さんにはちゃんと言ってきたよ!空弥と一緒に暮らすって!」
「だから!親父達はなんて....」
「空弥に迷惑かけるなって言ってた....」
「それだけ?」
「当たり前でしょ!他になんて言うのよ!まさか空弥と夫婦のように暮らすなんて言えるわけないでしょ!」
「それもそうだな....」
俺は妙に納得してしまった。
「ところで....私..本当にここに来て良かったのよね?」
「当たり前だろ!明日..お前を迎えに行こうと思っていたんだ!」
「本当に?」
「ああ....」
「それならもう一日ガマンすれば良かった....」
「どうして?」
「やっぱり女としてはね....」
風香はそう言って笑った。
「風香..俺のお嫁さんになってくれる?」
「うん....これからもよろしくお願いします....」
風香は頭を下げた。
「風香....」
俺は風香を抱きしめた。
「ちょっと!ここ玄関よ!中に入って....」
「そうだな....ゴメン....」
俺は中に入ってスーツを脱いだ。風香はスーツをハンガーにかけながら
「ご飯は?」
そう聞いてきた。
「ゴメン....済ませて来た....」
「いいよ!私がいきなり来たんだから....それじゃ..お風呂が沸いているから入って!」
「ありがとう....」
俺はそう言って風呂に入った。
「空弥!着替え置いておくね!」
浴室のドアの外で風香の声がした。
「ありがとう!」
「ねぇ湯加減はどう?熱くない?」
「ちょうどいいよ!」
「そう!良かった!」
俺がスケベ心を出して、風香と一緒に入りたいなぁ....なんて思っていると、ドアが開き風香が入ってきた。風香はもちろん全裸で、タオルをたらして一応前は隠していた。