空に風が吹くように-8
「風香..結婚しよう....」
「えっ?でも私達は....」
「わかってる....でも俺は自分の気持ちにウソをつけない....確かに正式な結婚は出来ない....それでも俺は風香と一緒にいたい....一緒に暮らそう....風香は俺が守るから....」
「本当にいいの?夢じゃないよね?本当に私をお嫁さんにしてくれるの?」
「ああ....」
俺は一度頷くと風香にキスをした。
「風香....愛してる....」
俺はそう囁き再びキスをした。舌を風香の口に入れると、風香もそれに応え舌を絡めてきた。俺は風香と舌を絡め合いながらTシャツの上から触ると
「あっ....」
思わず風香が声を漏らした。Tシャツの裾から右手を侵入させ胸にたどり着くと風香はブラを着けていなかった。俺の右手が風香の乳房に直に触れた時、玄関のドアが閉まる音が聞こえた。反射的に俺達は離れて風香はTシャツを直した。俺は風香を見て
「ここで待ってて!」
そう言って見に行こうとした。
「待って!泥棒かもしれないから....」
風香の心配もわかる....深夜のこの時間に家を訪れる人もいないだろうし、例えいたとしてもチャイムを鳴らすだろう....
「このままってわけにはいかないから....」
俺がそう言って立ち上がると
「私も行く!」
風香も立ち上がろうとした。
「もしもの事があると危ないから....」
ここで待っているように促すと
「独りにしないで....」
泣きそうな顔で言うので一緒に行く事にした。
なるべく音をたてないように廊下に出て、玄関の灯りのスイッチに手を触れた。風香は後ろで俺のTシャツを握りしめていた。
「誰?」
俺はそう言って、スイッチを入れた。
玄関の灯りに照らされて親父とお袋の姿が浮かび上がった。
「親父!お袋!」
「お父さん!お母さん!」
俺達は同時に叫んでいた。俺達は慌てて玄関に行って
「今まで何していたんだよ!心配したんだぞ!」
俺が二人を責めると
「すまない....空弥....」
二人がその場で土下座しだした。
「やめろよ!俺に謝ったってしょうがないだろ....謝るなら風香にだろ!残された風香がどれだけ心細かったか....」
俺がそう言うと
「風香....すまない....」
二人はそのまま謝った。
「お父さんもお母さんも頭を上げて!私は空弥がいてくれたから大丈夫だったから....それより今まで何をしていたの?心配したのよ!」
風香がそう言うと二人は立ち上がった。俺達二人をリビングに連れて行って話を聞いた。
急に多額の借金を背負い込んだ親父達は金策に走ったがうまくいかなかった。こうなったら自殺してその保険金で借金を....などと真剣に考えている時に、俺からの"解決した"というメールが届き自殺を思いとどまったそうだ。
「だったら何ですぐに帰って来なかったんだよ!」
「お前達に会わせる顔がなかったんだよ....だから今日まで....」
「何言ってんだよ!」
「だって....お前達の貯金まで....」
「俺の事はいいよ....それより島津のおじさんにはきちんとお礼を言ってよね!弁護士さんを紹介してくれたり、親身になって相談にのってくれただけでなく、お金まで貸してくれたんだから....」
「ここに来る前に会って来た....義弘には叱られたよ....いい年して何やってんだってね....」
親父は恥ずかしそうに頭をかいていた。
「空弥?それくらいでいいでしょう....それよりお父さんお母さんはお腹すかない?何か作ろうか?」
風香が助け舟を出すと
「そういえば....」
親父が言ったので
「じゃあ作ってくるね!空弥も食べるでしょう?」
「ああ....」
それから俺達は4人で風香が作ってくれた物を食べながら話した。