空に風が吹くように-6
シャワーを浴び終えて部屋に戻ると風香はベッドの上で眠っていた。俺の眠る場所は開けてあったが、さっきの事で気がひけてベッドではなく下で眠る事にした。しばらくは後悔が先に立ち眠れなかったが酒の影響もありいつの間にか眠っていた。
朝、抱きしめられている感覚に目を開けると、目の前に風香の顔があった。
「うわぁ!」
思わず俺が声をあげると
「何かあったの?」
風香が眠たそうに目を開けた。
「何で風香がここで寝ているんだよ!」
慌てて起き上がり風香に聞くと
「だって....空弥が下で寝ているから....」
風香は大きな欠伸をして答えた。
「そんな事言ったって....」
俺が口ごもっていると
「ゴメン....私また何かやっちゃった?」
「えっ?」
「実は....昨日....途中から記憶がないのよね....お酒に酔って空弥に何かした?」
「別に何も....」
「それならいいけど....亜季にもよく言われるのよね....風香は絶対男の人とお酒を飲んじゃいけないって....」
「どうして?」
「私って....急に記憶を無くすみたいなの....でも他人から見れば酔っているように感じないんだって....だから気がついた時は男の人と一緒に裸で寝てた....なんて事があるからって....」
「まさか......」
「変な想像しないで!そんな事は一度も無いから!男の人が一緒だとほとんど飲まないから....思い切り飲むのは亜季とかの家で女子会をしている時だけだからね!ところで....本当に何もしなかった?」
「大丈夫だよ!」
「本当に?」
「ああ!」
俺が頷くと
「良かった!」
風香は明るい笑顔を見せた。それはたぶん風香の優しさだろう....酒に酔って記憶を無くしたふりをして昨夜の事を無かった事にしてくれているのだろう....だったら俺も今まで通りにするのがいい....兄妹として風香と接するのがいいとそう思った。そして風香に感謝した。
「見送りはいいって言ったのに....」
帰りの新幹線のホームで風香が言った。
「どうせ暇だったから....」
「そうなの?」
「ああ....」
「あっそうだ!またこっちに遊びに来たら泊めてくれる?」
「もちろんいいよ!」
「じゃあお願いね!それじゃあ行くね!」
風香はそう言って帰って行った。俺は風香が乗った新幹線が去って行くのを見送りながら、俺はこれから風香を守っていこう....風香の事を守ってくれる人が現れるまで....そう誓った....
その後、毎年風香は夏休みに遊びに来た。俺は"兄"として風香と接していた。