空に風が吹くように-5
「俺?俺は....去年彼女が出来たけど半年程で別れた後はフリーだよ!」
「どうしてその人と別れたの?」
「俺に....他に好きな人がいる事を気づかれて....」
「うわぁ....空弥って浮気者だったんだ!」
「違っ....違わないか....好きな人がいながらその子とつき合ったんだから....」
「どうしてその好きな子に告らないの?」
「好きになってはいけない人だから....告れない....」
「好きになってはいけない人ってどういう事?」
「......」
俺が話せないでいると
「ねぇ!教えてよ!空弥!」
風香は俺の肩を掴んで、俺の体を揺らした。
「俺が好きなのは....風香!お前だからだよ!」
俺は酔っていたのか風香を抱きしめ、そのまま押し倒してしまった。それはアルコールのせいだけではなく、俺の心の奥にしまい込んでいた物が溢れ出てきたのだった。
「ずっと風香が好きだった....風香を愛しているんだ!」
俺は風香にキスして、風香の体を弄った。
「ちょっと!冗談はヤメテよ!」
はじめは軽い調子で言っていた風香は、冗談ではないと気づくと激しく暴れてきた。
「ヤメテよ!空弥!」
風香は俺の胸を押して俺を引き離そうとした。しかし、力で俺にかなうわけもなく引き離す事は出来なかった。
「ヤメテ!空弥!」
風香は必死に手足をバタつかせた。
「ヤメテって言ってるでしょ!」
風香の平手が俺の頬を打った。その平手打ちで我に返った俺が力を緩めると、風香は俺の胸を押して俺の下から抜け出した。
「乱暴はヤメテよ!」
風香は乱れた衣服を直しながら叫んだ。
「ゴメン....」
俺はその場でうなだれていた....とんでもない事をしてしまった....そんな思いが俺を支配していた。
「本気なの....」
「えっ?」
恐る恐る顔を上げると、風香は困ったような顔をしていた。
「私の事が好きだって....本気なの?」
俺は黙って頷いた。
「私達は兄妹なのよ!わかっているの?」
「そんな事はわかってる....でも風香しかいないんだ....風香が好きなんだ....自分でもおかしいと思っているよ....風香以外の女の子とつき合えば忘れられるって思ったんだ....でもダメだった....俺には風香しかいないってわかったんだ....こんな事するつもりはなかったんだ....本当にゴメン....」
俺は下を向いたまま告白した。
「いいよ....」
俺が顔を上げると、風香は穏やかな微笑みを浮かべていた。
「乱暴にしないなら....いいよ....今夜だけ空弥の恋人になってあげる....だけど約束して!明日からはこれまでの空弥に戻るって....」
「風香....」
俺は風香を抱きしめてキスした。唇を離し風香の顔を見た時、風香の目から一筋の涙が流れ落ちた。俺はもう一度キスして
「ありがとう....でも....もういいよ....」
俺は風香から離れた。
「空弥?」
「もういいんだ....風香を悲しませてまで俺は....」
俺は立ち上がり浴室に向かった。
「空弥?」
「水でも浴びて頭を冷やして来る....」
「......空弥のバカ......」
そんな風香の呟きが聞こえたような気がした....