SHRの俺の日常-1
「では出席を取る。名前を読んだら返事をしろ」
ここは二年B組の教室。担任教師は出席簿を広げペンを手に持ち言った。
「え〜、青山、安藤、飯田、伊藤、井上、上田」
次々に名前が呼ばれていく。
「次、江口」
丁度俺が教室の扉に辿り着いた時、名前を呼ばれた。俺は扉をばーんと開けて教室に入る。
「はいはーい、俺います! ・・・ぜぇぜぇ、はぁはぁ」
妹と超特急で走ってきたので疲れた。俺は思い足を引きずり席へと向かった。俺の席は窓側の後ろから二番目である。
「江口、間に合ったのは良いが、制服はきちんと着なさい」
あの後、俺は慌てて準備をして家を飛び出してきた。と言ってもパジャマを脱ぎ捨てワイシャツを羽織り、ズボンを変え、適当に荷物を突っ込んできただけなので、相当悲惨な格好をしていた。
前が全開になったワイシャツのボタンを締め、ずり落ちたズボンのベルトをきっちりと直すと俺は席に着いた。
そして後ろに座る女子に挨拶をした。
「の〜りこちゃん、おはよう!」
「達也君、また遅刻ぎりぎりじゃない。もう少ししっかりしないとね」
窘められてしまった。
髪を一本に束ねた凛々しい雰囲気のこの少女の名は大神紀子。俺の彼女である。中学の頃から同じクラスで、高校入学をきっかけに付き合い始めた。
俺は改めて気付く。一年も付き合っている彼女がいるのに、未だ妹と“あんなこと”してて良いのか?
罪悪感に苛まれ俺は彼女に大変申し訳なくなってきた。
やや、と言うかかなり異常な妹を持っていたとしても俺は兄としての威厳を失ってはいけないはずで、最早それすら失いかけていると言う俺の不甲斐なさ。はぁ、なんて情けないんだ。自然と気持ちが沈む。
「もしかして、教科書忘れたの?」
後ろから彼女の声が聞こえる。いや、そう言う訳じゃ・・・教科書も忘れてるな。
もっとしっかりした男になると密かに誓う、SHRの俺の日常であった。