君にしてきたたくさんのひどいこと-7
あてもなく近所を歩いていくうちに、自然と頭も冷えてくる。
芽衣子に手をあげたときの呆然と俺を見つめていた表情だけが、やけに何度も思い出されてくる。
カッとなってやってしまったこととは言え、自分より非力な芽衣子に手をあげてしまったことに後悔の波が押し寄せてきた。
やっぱりどう考えてもこちらが悪いのだから、俺が謝らないと本当に芽衣子に愛想を尽かされてしまう。
今まで喧嘩なんて腐るほどしてきたが、いつも俺がヘラヘラ謝って、芽衣子が呆れながら許すパターンで、仲直りなんて容易くしてきた。
でも、今回ばかりは原因が俺の浮気だし、逆ギレして芽衣子に手をあげてしまったしで、修復するのは並大抵のことじゃないような気がしてきた。
しかし、あのアパートに戻ろうとすると、足枷をつけられたように足取りが重くなる。
このまま久留米ん家に厄介になることも考えたが、芽衣子を殴ったことを奴が知れば、今度は俺が久留米にぶん殴られそうだ。
じゃあ、芽衣子の言うとおり別れた方がいいかと言うとそれだけは絶対嫌だ。
なんだかんだ言っても俺は芽衣子を好きだし、失うことなんて考えられない。
「あー……、帰りづれえ……」
俺はうまくまとまらない頭を抱えながら、何気なく目に入ったコンビニの中へと足を踏み入れた。