君にしてきたたくさんのひどいこと-3
「久留米くん、その日は仙台に出張でいなかったじゃん。
わざわざ牛タンのお土産くれたの忘れちゃった? おバカさんだね、茂は」
一瞬にして血の気がひく。
だが、もはや何を言っても無駄だとわかっていても、
「ああ、久留米抜き……だったかな」
と、最後の悪あがきをせずにはいられなかった。
「いいかげんにしてよ!」
芽衣子はダンッとテーブルを叩いて俺を睨みつけた。
「“芽衣子にバレてないんでしょ?”って時点であんた宛てのメールに決まってんじゃん!
もう、ホンット最低!!」
そして芽衣子は目尻に涙を浮かべながらわめきちらし、そこらにあったティッシュやら、枕やら、クッションやらを手当たり次第に俺に投げつけてきた。
「お、おい! 落ち着け!」
「何をどう落ち着けってんのよ、人の友達に手を出すなんて信じらんない!」
「待てったら!」
誘ってきたのは向こうの方だぞ、と反論しようとした。
間違いメールを寄越してきたエミは、芽衣子の大学時代のアルバイト先でできた友人で、お互い社会人になってからも時々芽衣子のアパートに遊びに来たりする仲良しだった。
すでに芽衣子のアパートで同棲してた俺も、何度か顔を合わすうちにノリのいいエミとすっかり仲良くなっていた。
ことさら盛り上がったのは、エミの彼氏の愚痴だった。
軽そうなギャルのエミには、遊び人の彼氏がいて、コイツの度重なる浮気に散々手を焼いていたらしい。
そしてその愚痴を芽衣子や俺に聞いてもらうことがストレス発散となっていたらしかった。