君にしてきたたくさんのひどいこと-11
何度も詫びる俺の熱意がやっと通じたのか、やがて芽衣子は身体をむっくり起こして、睨むようにこちらを見下ろしていた。
毛布をかぶっていたせいか、彼女の頭は静電気でボサボサになっていた。
さらには真っ赤な目、赤くなって少し腫れた頬、への字に結んだままの口に少しびびってしまう。
ようやく芽衣子の口から出た言葉は、
「……ホントにもう浮気も、殴ったりもしない?」
だった。
“もう無理”とか“別れる”とか言われるもんだと思っていた俺は、わずかな希望の光が差し込んできた気がして、少し口元が緩んできた。
俺はゆっくり顔を上げて、神に誓うつもりで
「ああ、もう二度としない」
と、キッパリ言った。
すると芽衣子が、フッと強張った顔を緩めてくれたので、俺はすかさずテーブルの上のレジ袋を彼女に渡した。
驚いたように目を丸くしてる芽衣子に、
「ほら、お前の好物買ってきたんだ」
と、中身を見せた。
「あ、これ……」
芽衣子が少しだけ微笑んでくれたから少々気が大きくなって、
「ほら、こっち来て食べろよ」
と、グイッと彼女の腕を引っ張った。
そして俺に促されたままにベッドに腰掛けた彼女に、プレミアムロールケーキの封を切って渡
した。
「……おいし」
戸惑いながらもチビチビ食べ始めた彼女を見て、ようやく心から安心できた。
そうなると現金なもので、ピョコンとまた俺の悪い癖が出てくる。
「なあ、俺にも一口ちょうだい」
すると彼女は、甘い物が嫌いな俺がそう言ったことが不思議だったようで、首を傾げながら
「はい」
と、スプーンですくったプレミアムロールケーキを俺の口の前に運んできた。
でも、俺はスプーンをひったくってそれをテーブルに置き、
「違う、こっち」
と、芽衣子にキスをした。