ハジマリ-6
「ちょっ、何を触ろうとしてんだよ!」
「えっ? あっ、何よ。男のくせに手で隠したりしてるからでしょ」
「何で俺ばっかり。無理やり触ろうとするなんて、やっぱりミサって男みたいだよな」
「何よぉ。じゃあ男かどうか、見てみなさいよ」
あたしは胸を隠していた手をほどいてみせた。
イサムの視線が、あたしの胸に注がれている。前のめりになって、だらしなく口を開けて。
胸は、まだそんなに大きくはない。手の平で隠せば余裕で隠れてしまう。
それでも、男にはない曲線は確かにあたしの胸になだらかに存在した。
全体的に小麦色でよく日に焼けたあたしの肌だが、そこは真っ白だった。
水着で隠れる箇所だけ真っ白なのが、少し恥ずかしい。イサムの上半身は、黒かった。
あたしの真っ白な部分を、イサムは息をこらしてただ見つめている。
「あたしは、胸見せたんだから、イサムも手を離しなさいよ。往生際悪いわよ」
「お前は、胸だけじゃないか」
「それじゃあ、これで終わりにする?」
あたしはそう言い放ってやった。イサムは言葉に詰まっている。
これ以上は、さすがのあたしも正直少し怖い。でも、ここまでだと、何か足りない気がした。
このまま終わって、イサムが糸の切れた凧のように飛んでいってしまう。
飛んで行く先には、ユキちゃんがいるのだ。
女の子らしい女の子と、男の子らしい男の子。悪くない組み合わせだと思う。
でも、二人が楽しそうに並んで歩いているさまを想像するのは、何か心がモヤモヤした。
そんなことを考えていると、イサムがおもむろに股間から手を離した。
ビョンと元気よく、バネのように股間から跳ね出てきた。
カチカチに硬くした肉の棒が、ヘソの方向に向いている――イサムのおちんちん。
あたしは瞬きもせずに、思わずそれを見つめた。
イサムは恥ずかしそうにしている。
それはそうだろうと思った。こんなカチカチにボッキしたものを見られたら……。
それだけに、イサムの決意のほどが伺えた。
イサムは、どうしてもあたしのハダカを見てみたいのだ。
でも、その前にこのカチカチのものを触ってみたい気がした。
「ねぇ……イサムのオチンチン、触ってもいい?」
「えっ? だ、ダメだよ……お前の服、まだ脱がせてないだろ」
「じゃあ、あたしのおっぱい、触っていいから」
あたしはイサムに寄り添うように近づいて、胸をやや反らせて差し出す。
イサムはどうしていいかわからないようだ。
しばし、あっ、えっと、などと呟きながら葛藤した果てに、のろのろと手をあたしの胸の方に伸ばしてきた。
でも、胸に近づいては、躊躇してイサムの手は遠ざかる。それを何度か繰り返した。
意気地のない男だなと思った。触りたいなら、触ればいいのに。
すぐに思い直した。イサムも、怖いのだ。あたしも、怖さを感じてはいるから。
それと同様のものがイサムにもあるような気がした。
でも、怖いだけではなかった。怖さと同じくらいの期待もあった。
イサムにだったら、触られてもいい。イサムに触られるとどうなるのか、感じてみたい。
あたしは躊躇するイサムの手を取って、自分の胸にゆっくり押し当てた。