ハジマリ-4
「ねぇ、見たい? 見たくない?」
「――そんなの……見たいって言ったら、お前、皆に言いふらす気だろう?」
随分失礼な言われようだが、それはつまり見たいということなのだと思った。
言いふらしたりなんかは、たぶん、しない。
「わざわざ自分のハダカを見せたなんて、言いふらしたりはしないわよ」
「え? それじゃあ、お前、ほんとうに?」
イサムは目を皿のようにして、好奇心丸出しであたしに問いただす。
あたしは行儀悪く、足をイサムの前に投げ出すように広げて見せた。
ショートパンツから流れた小麦色の自分の足が、イサムの方に向かってVの字に広がる。
イサムはあたしの足とVの字の中心を、臆面もなくジロジロと見つめた。
イサムにとって、今のあたしは完全に女なのだ。
何故かわからないが、満たされるものを感じる。
ドキドキする心臓の鼓動が心地よかった。もう少し足を広げてやる。
このショートパンツの隙間に、イサムの見たいものがあるのだ。
「あたしだけハダカになるなんて、イヤよ。イサムも一緒にハダカにならなきゃ、見せない」
「え、俺もか――」
「当たり前でしょう。それに、誰のハダカを見たいか、お願いしてくれなきゃ」
「な――お前、性格悪いな……」
「別に、イヤならいいわ。じゃあ、この話は、これでおしまい」
「クソ! わかったよ、言うよ。ミサのハダカが、見たいんだよ」
言われた瞬間、体に震えが走った。
イサムが見たいのは、ユキちゃんではなくて、あたし。
あたしのハダカが見たいのだ。ドキドキして、それでも少し顔がニヤついてしまう。
もはやイサムは真剣だった。真剣な顔をして、あたしの方を向いている。
その真剣さがたまらなく心地よかった。そんなに真剣なら、仕方がない。
イサムが、それだけ言うのだから――
「じゃあ、着ているもの、お互い一枚づつ脱いでいこう?」
あたしは、ついにそう言ってしまった。
もう最近は親の前でもハダカになどならない。
イサムはさっさと上着を脱いでしまって、上半身をあたしに晒してしまっている。
少し不公平だな。だって、女の子は上を脱いだらおっぱいを見られてしまうのに。
男の子はそれがないから、さほど気にはならないのだ。
イサムが、お前も早く脱げよと急かした。
Tシャツをまくり上げると、日に焼けていない白い肌が顕になっていく。
次第にヘソが見えて、お腹が見えて、シャツが隠す部分が減っていくとイサムの顔色が変わっていく。
やがて、あっ、と声が聞こえた。その声に、あたしの体がゾクリと反応する。
おっぱいが、見えてしまったのだ。
あたしの胸に膨らみがあることを、イサムは知っていただろうか。
胸の先端がジワジワと疼いた。
あたしはサッとTシャツを脱いで、両手で胸を隠してしまう。
イサムの瞳はそこに釘付けだ。口が声を出した時の驚きそのままに、まだ開いたままだった。
具体的に、彼にとってあたしが女であると認識されたように思えた。