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back to the ground 〜十年後の僕へ〜
【青春 恋愛小説】

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back to the ground 〜十年後の僕へ〜-7

そこには明日に向けられた生徒会長の微笑があり、何かを悟るような人たちがいる。
それは成長と呼ぶのだろうか。
翼は、もうない。
知っている。
あれから十年、地べたを這うように誰もが生きてきただろう。
世の中に折り合いをつけて、
現実に目を逸らさないで、
人は生きていく。
この手からこぼれ落ちていったものは、きっと限りなく多い。
それでも、こうして笑い合える。
ならばそれで良いのかもしれない。

誰かが押し出されるように朝礼台に上がる。
「ど、どうも」それは菊池だった。
周りの人たちがいっそう騒ぎ出した。
「えーと、俺、菊池って言います。今、あるサッカークラブチームでキャプテンをしています」
あるクラブチームとは、いつもJ1の優勝争いを演じている、あのチームだ。
「俺は中学時代はレギュラーではありませんでした」
えぇ、そうだったの?
ざわめきは大きくなる。
「あの頃は、自分よりもずっと頼りになる選手が同じポジションにいて、いつもベンチで彼の姿を見ていました。けれどその人は自分のプレイが嫌いなようで、スタイルを変えよう、変えようとしていました。俺は、ほとんどベンチだったけれど自分のプレイを決して変えなかった。そして今の自分がある。なぁ、聞いているかい?あの頃の君は、とても輝いていていた。ライバルだったから言えなかったけれど、君は誰よりも輝いていたよ。みんな自分の事となると、途端に盲目になっちまう。それは残念なことだよ。もっと自信を持って、生きてみればいい。心の持ちようで視界が変わるから。まず自分を認めることだ。
俺たちは飛べない。それを認めれば、飛べないなりに、やり方はあるはずだ」
あぁ、やっていくさ。
そう言った彼は、今も走り続けている。
あの日見た星は、今の僕の目にも輝いて映るだろうか。
空を見上げた。
まだ太陽は沈みきっていなかった。
ピンク色の空は、どこまでも続いていた。

「ねぇ、私、覚えてる?」言われて僕は振り返る。
笑うとできる笑窪に、彼女はその面影を残していた。
「あぁ、覚えているよ」
「みんな、凄いよね。なんで約束もしていないのに集まるかな?」
「けれど僕らは違う」
「そうだね。私たち二人だけは、ちゃんと約束したもんね」
二人だけの教室。
卒業式の数日前。
取り残された放課後。
「あのさ、やっぱり私、あんたのこと好きだわ」
予想だにしない展開に、僕は面を喰らった。
「え?」
「結局、忘れられなかった。何回あんたのことを思い出したか分からないよ」
「でも僕はあのときの僕とは違う」
「私は、あのときのあんたを好きになったんじゃないみたい」
やっぱりさばさばとした口調で。
全部のあんたを好きになってたみたいだわ、と言う。



すっかり変わった容姿。
十年の時の流れ。
それぞれの立場。
そんなものは、人と人の繋がりの前では、取るに足らないもので。
約束もなく、まるで何かに引っ張られるように集まった奇蹟は、これから何度も繰り返すことだろう。
その度に僕らは、あの頃持っていた何かを羨み、その時持っている何かを確認する。
十年後の僕は、きっと想像もつかない僕になっている気がする。


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