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透視メガネ
【ショートショート その他小説】

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透視メガネ-5

健一が帰るのを確認してから栄蔵は涼香に話しかけた。
「今日のカモは、彼で終わりかな?」
「はい。今日のバイト希望者は彼で終わりです。」
さっきのノートパソコンとメガネを持ってパーテーションの向こうから出てきた。
「明日の予定は?」
「明日は6人です」
「そうか。明日が今回の最終日か」
「毎日10人だったのに最後は少ないんですね」
「この事務所を撤収しなければならないんでね」
「…事務所の家賃も踏み倒すんですね?社長。」
「そんなもの払ってたらせっかくの利益が台無しだからな」
「…」
涼香は、ノートパソコンとメガネをスチールテ−ブルに置くと両手の手の平重ねて栄蔵の前に差し出す。
「なにかな?」
「今日のバイト代ください。日払いの約束です。家賃みたいに私のバイト代も踏み倒されたらたら困ります。」
「判ってる。昨日までちゃんと払ってたろう。ところで別な町でもこれをやるんだが、またバイトしてくれないか?」
「詐欺の片棒担いだうえ下着姿や裸になるなんて、もういやです。」
ちゃんと払ってくださいよ」
「そこを何とか。時給をもっと上げる。」
栄蔵は両手を合わせて涼香を拝みだした。
「遠くの町でやるんでしょ?」
「わかった。交通費も全額出す。頼むよ!裸になってくれる美女なんてそうそういなんだ」
「…美女。」
「そう。涼香君みたいな美女。めったにいない」
「私、好き好んで裸になってるわけじゃありません」
「判ってる。この通り」
栄蔵は、土下座を始めた。
「もう…。時給と交通費の件間違いないでしょうね」
「あ、ありがとう。君がいてくれば、いくらでも儲かる。」
栄蔵は涼香の手を握りしめる。
「でも男ってあんな手に引っかかるなんて馬鹿ね。冷静に考えればわかりそうなもの」
「いや。いや。今回のは絶対騙される。君のおかげでバイトと偽ってインチキ商品を売りつける詐欺が成功する」
涼香は、透視メガネをつまみ上げて自分でかける。
「ただのガラスなのに・・・」
突然、栄蔵が服を脱ぎだす。
「何してるんですか!社長!」
「いやいや、透視メガネをかけてるから、裸に見える・・・・」
「いい加減にしてください。お芝居は、カモ相手だけにしてください。」
栄蔵は涼香の顔からメガネを外して自分でかけた。
「涼香君も裸に見めるはず」
「脱ぎませんよ!」
「これが欲しいんじゃないか?」
栄蔵は自分のものを涼香の方に突き出した。
「いりません!」
「相手をしてくれたら特別ボーナスを出そう」
「詐欺師の話なんか鵜呑みにしません」

翌日銀行が開くと同時に高井から高井本人を含め21人分の代金210万が振り込まれていた。
当日のうちに20人の友人にあの素晴らしい透視メガネの体験を自慢げに話して注文をとりまとめたのだ。
もちろん高井は後日、その友人らに激しく糾弾される事にになる。
だが今はあのすばらしいメガネを手にする日を夢見て疑わない。
同様な振込み件数が100件以上あった。
高井と同じくバイトをした人数は100人を超えていた。
しかし高井達のバイト料金が彼らの口座に振り込まれる事はない。
そして今日も彼らと同じバイトに応募してきた若者が6人、彼らと同じ体験をして同様の結末をたどる。
みなさんもこんなくだらない詐欺に騙されないようご注意。
END



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