11-3
「おつかれ」
「グッジョブ」
「俺の才能のおかげだと言って欲しいね」
「よく言う。さんざん女の子にこんな真似やらせておいて」
「けどさあ、やっぱり学園祭でこんなの上映できっこないよな?」
「男子は集まるかもしれないけど、女子は引くよね」
「あたしは好きだけど」
「ほんとうに裸になったわけじゃないんだし、観たい子にだけ観てもらったらいいんじゃない?」
「いくらフィクションだからってさ、カズヤが犯人っていうのは笑える」
「ヘイケ先生も教授じゃなくて准教授なのに、偉くなったもんだな」
「オダの台詞もウケる。今の俺には花織が必要だ、なんてさ」
「笑うなよ」
「そういえばカオリンがいないみたいだけど」
「ユウコは何も聞いてないのか?」
「わかんない」
「ミサキ先輩なら、バイトがあるとかで途中で帰っちゃいましたよ」
「まさか、風俗のバイト?」
「そんなわけないでしょ。ホールスタッフだよ」
「話、戻すけどさあ」
「勝手に戻すなよ」
「講堂にいたカオリをアパートまで連れてったのって、誰?」
「あれってオダが連れて帰る設定だったよな?」
「俺は一人で帰ったよ」
「そうだっけ?」
「最後のバス停でカオリンが連れ去られるシーンなんて、あんなのあった?」
「誰かさんのサプライズだよ、きっと」
「待てよ、そんなシーンなんて撮った覚えないぞ」
「ミサキ先輩って可愛いから、誰かがこっそり編集したんだと思う」
「ほんとうのミスキャンパスは、カオリンだもんね」
「そんなことより、はやく打ち上げパーティーに行こうよ」
「車、誰が出してくれんの?」
「今日はノンアルにしとくわ」
「とか言って、結局は飲んじゃうくせに」
やり切ったという達成感を引きずったまま、学生たちは小さなグループをつくり、それぞれの思いを吐き出していた。
みんなの情熱を持ち寄って、かけがえのない時間を共有する。
そうやって絆と絆が束になって、さらに太い絆になっていくのだと、ここにいる誰もがそう思った。
冗談と笑い声が散らばり、誰もいなくなった部屋のデスクには、まだ熱を残したままのパソコンと、忘れられたUSBだけが、静けさの中にあった。