8-3
この部屋は、すべてにおいて都合がいい。
こんなふうに夜になれば顔の見分けもつかない。
空調も効いている。必要ならば照明を点けたっていい。
とりあえず目隠しと手錠は済ませた。
媚薬もじゅうぶんに効いているはずだ。
それじゃあ、四人目の魔女を存分に可愛がってあげようか──。
光さえも届かない心の深層に闇を抱えたまま、男は体の節々を振りまわして準備運動をはじめる。
倉庫というだけあって、パイプ椅子は捨てるほどある。
それらを並べて組み合わせれば、間に合わせの調教台が完成する。
成人女性一人分のスペースである。
四人目の魔女、霧嶋優子がそこに横たわっている。
倉庫の明かりを点けてみると、その姿がくっきりとあらわれた。
クリーム色のパーカー、色気を放つ赤いショートパンツ、そこから伸びる太ももからつま先までを黒いタイツが覆っている。
一体どういう遺伝子を掛け合わせれば、これほど完璧な『イヴ』が生まれてくるのだろうか。
男は何度もそんな掛け算をくり返し、美しい獲物に冷静な視線をそそぐ。
出来合いの調教台の上で、優子はなすすべもなくもがいていた。
そこから逃げ出したいというよりも、媚薬の巡りを体中に感じて喘いでいる様子である。
冷たい手錠と、顔の半分ほどが隠れるアイマスク。
鼻と口は呼吸のために許されている。
それなのに優子は救いを求めるどころか、甘ったるい吐息ばかりを吹きつけている。
「うっ、ううう、ああう、あっ……」
唇のグロスを舐める舌先からは唾液が滴っていた。
男は無言のまま優子に歩み寄り、レイプの気配を悟らせるために、数ある道具の中からピンクローターを選択して、スイッチを入れた。
虫の羽音のような唸りが空気を振動させる。
震える球体を振り子のように揺らしてやると、アイマスクをした優子の顔が音を追って左右にさまよう。
ふっ、ふっ、ふっ、と呼吸が乱れ、すり合わせる太ももがせわしい。
男は言葉を発する代わりに、自分の股間をごわごわとふくらませて、優子のパーカーのジップを手で裂いた。
「いやっ」
優子の声だ。
その瞬間は顔を背けて拒絶していたが、鳴り止まない玩具の音を聞き取ると、またすぐに正面を向いた。
はだけた服の下に胸のふくらみが二つ見える。
それは優子の呼吸に合わせて上下に揺れ、男はそこへローターを落としてみた。
「んんっ」
ドームの上でローターが飛び跳ねた。
優子は歯を食いしばり、身をよじった。
くすぐったい震えがシャツとブラジャーを突き抜けて、乳首を刺激する。
アイマスクの裏で白い幻が見えたような気がした。