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「とにかく、今すぐにでも優子に連絡するんだ」
それだけ言い残して小田は電話を切った。
一方の花織はさっそく優子にメールをする。
『いまどこ?』
みじかいメッセージに祈りを込めて、どうか無事でいて欲しいと唇を結んだ。
耳鳴りがしていた。
平家悠利のアリバイは?
被害者たちの体内に残っていた精液について、容疑者全員が否認する理由は?
優子の安否は?
犯人の人物像は?
いろんな不安要素が一度に押し寄せてきて、誰かにそばにいて欲しいと思った。
非力な女性ばかりを犯して洗脳する、そんな卑怯者をいつまでも泳がせておいていいわけがない。
あたしたちの街を取り戻そう──。
花織の目に光が差したとき、優子からの返信があった。
『あたしなら大丈夫だから、心配しないで』
当たり障りのない台詞、そこに彼女らしさはなかった。
疑問を解くべく返信する花織。
『植原咲さんを見つけたのは優子なの?』
こんなやり取りに意味があるのだろうかと思った。
電話をすれば済むことなのに、何パーセントかのネガティブな部分がそうさせてくれない。
優子からまたメールが来た。
『あたしが見つけたのは魔女だった。ほんとうはあたしも魔女なの。花織にはこの意味がよくわかっているはずだよ』
花織はすべてを理解した。
友情が冷めていく感じではなく、子どものいたずらが親に見つかったような、淡い胸の痛みだった。
そしてこのメールは怪しい。
『あなた、優子じゃないよね。どこへ行けば彼女に会えるの?』
花織はなけなしの勇気にまかせて、核心に迫るメールを送った。
しばらく沈黙があって、また返信を受け取る。
『あたしに会いたいのなら、今夜の二十二時、キャンパスのファミリアホールに来て。花織一人で』
心臓が不規則に脈打っていた。
寒気をおぼえた全身が鼓動に包まれている。
従うべきなのか、思いとどまるべきなのか、とにかく小田や黒城には告げ口しないでおこうと思った。
にわかに曇る表情の裏で、花織は一つの決断をした。