6-1
夜の帳(とばり)が下りる頃、弓のかたちに仰け反った白い肢体が、ベッドのそばで腰を揺らしていた。
「あん、ふっ、ふん、ううん、はっあっあっ、ああ、いっあっ……」
野獣の生殖器そっくりの道具を陰部へ誘い、華奢(きゃしゃ)な体が沈んでは浮き、沈んでは浮き、あられもなく潮しぶきを吹いている。
ねっとりと絡みつく音は、いつまでも糸を引いて切れることがない。
ソフトなタッチでクリトリスの粒を撫でていけば、過激なまでの快感で応えてくれるのだ。
媚薬はたっぷりある。
覚醒した体をさらに目覚めさせるには、薬を追加しなければならない。
あたしの中にも魔女が棲んでいるのに、どうして気づいてくれないの──。
彼女は焦っていた。
快楽が脅威に感じたこともある。
でもなぜかいつも最後まで逝かないと気が済まないのだ。
卑猥な言葉で打ちのめされたい。
レイプよりも酷い目に遭わせて欲しい。
ザーメンで溺れたい。
そこに愛情なんていらない──。
うつろな瞳に涙が浮かぶ。
それは絶頂を意味していた。
体が渇いて、喘ぎも渇いていく。
それでも愛液は止めどなく溢れてしまう。
偽ったり、疑ったり、惑わせたり、化かしたり、そんなまわりくどいことはしなくていい。
あたしをぜんぶ食べて欲しいだけ──。
生きているだけで気持ちがいい、そんな体に調教して欲しいのだ。
あたしは最後の魔女。
はやく、はやく来て──。
「ああ、いい、いくう、いくん、いくん、いいっ……」
やたらと女目線を意識した造りのラブホテルとかなら、それなりに声を上げたってかまわないだろう。
それが壁の薄いアパートともなれば、セックスやオナニーにだって気配りがはたらいて、満足のいく快感は得られなくなる。
しかし今はどうかしていた。
もうこれ以上ないほど上り詰めたあとに、切ない喪失感が膣から子宮に向かって這い上がる。
そして声を上げる。
媚薬に依存した彼女の、かわいそうな体質だった。
「はあ、はあ、あうん、いやあ、もっと、あん、ああ……」
まるい背中をさらにまるめて、引かない快感に甘えつづける。
その甘えにつけ込むように媚薬が神経を冒して、彼女はタブレット容器の錠剤を口にふくむ。
加えてローションボトルの中身を局部へ塗りたくり、火のついた体を鎮めるように自慰行為をはげしくしていった。
「あん、うん、おか、しく、なっちゃう、うう……」
ただ悔いを残さないために、女に生まれて来れた奇跡に、感謝の行為をくり返すのだった。